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不妊の末に“養子”をもらった親の喜びと、直面する問題

古泉智浩さんインタビュー 前編】

 子どもを持ちたいと願っているのになかなか授かることができない。もしそうなった場合、“里子”や“養子”という選択肢もあることを考えてみたことがあるでしょうか?

 2015年に、里子を迎えたいきさつや里子との日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』(イースト・プレス)を出版した古泉智浩さん(48歳)。6年間で600万円を費やした不妊治療についてや、里親になると決めるまでの夫婦それぞれの心境などが赤裸々に書かれ、話題を呼びました。

古泉智浩さん

古泉智浩さん

 里子の「うーちゃん」とは2年間一緒に暮らしたあとに特別養子縁組を行い、はれて戸籍上でも親子に。12月13日に発売されたエッセイ漫画『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』(イースト・プレス)には、特別養子縁組が成立するまでの過程や男親の育児などが、これまた赤裸々に描かれています。

 そんな古泉さんに、通常の養子縁組と特別養子縁組の違い、うーちゃんが里子から養子になったときの気持ちなどについて聞きました。

特別養子縁組は戸籍に「養子」と記載されない



――最新刊を読んで、3歳になったうーちゃんの成長にまず驚きました。おしゃべりも上手ですごくかわいいですね。

古泉:かわいいですよ~。うーちゃんの姿かたちはかなり似せて描いているので、この最新刊の表紙を見たときに「あ、うーちゃんだ!」って自分で言ってました。

――かわいい(笑)。うーちゃんを里子として迎えた当初から、いずれ養子縁組することは考えていたんですか?

古泉:そうですね。里子はあくまで“実親さんから預かっている”という状態なので、返してと言われたら返さないといけないですし、親権が実親さんにあるので苗字も実親のものですし。養子縁組すれば同じ戸籍に入る家族になり親権も移行するので、実親さんに返さなければいけないこともなくなり苗字も一緒になりますからね。

『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』(イースト・プレス)より

『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』(イースト・プレス)より

――しかも、うーちゃんは“特別養子縁組”で養子になったので、通常の養子縁組では戸籍に「養子」と記載されるところ、「長男」と記載されるんですよね。

古泉:そうなんです。実子とほぼ同じ扱いですね。特別養子縁組を結ぶには預かった子どもを6歳までに自分の家の籍に入れるという条件があるので、うちも6歳になるまでには申請しよう……と考えていたのですが、児童相談所の職員さんのすすめでとんとん拍子にコトが進んだんですよね。

実親の親権が強すぎて養子縁組が成立しないケースも



――特別養子縁組には、ほかにも実親の同意や養親の年齢、養子となる子を半年以上監護していることなどいくつか条件があるんですよね。古泉家はどれも問題なく、拍子抜けするほどスムーズに成立した様子が描かれていますけど、実際このようにうまくいくケースが多いんでしょうか?

古泉:うまくいくケースばかりではないと思います。実親さんが反対すると、こじれて裁判に発展したりするらしいので。我が家のケースは誰ひとり反対する人がいなかったので、非常にすんなり成立したんですよね。

里親登録した人や里親をしている人が集まる「里親会」の定例会で聞いた話では、赤ちゃんの頃から預かっているのに実親さんが反対して養子縁組できず、大きくなっても違う苗字のままで子どもが反発するようになってしまった……なんてケースもあるようです。

『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』(イースト・プレス)より_2

『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』(イースト・プレス)より

――なんで反対するんでしょうね。話だけ聞くと、「なぜ何年も養育してくれた人に親権を渡さないのか?」と憤りを感じてしまいますが……。

古泉:そうですよね。まさに、日本の“実親の親権強すぎ問題”ですよ。法律上、15歳になったら本人の意思と家庭裁判所の許可があれば養子になれるんですけど、それでも実親が反対すると裁判に発展してしまうそうなので。長年育ててきても、裁判官の判断によっては養子にできない可能性もあるわけです。

――子どもと完全に縁が切れてしまうのが嫌なのか、いずれ親の権利を行使するつもりなのか、反対する親は一体どういうつもりなんでしょう。

古泉:ギャンブル依存症の親が、子どもが成人して給料を取るようになったらお金の無心に来るとか、そういうケースもあると聞きます。

――そんな親から子どもを守るために、年齢関係なく実親の反対があっても裁判なしに親権を取れる例外を設けたほうがいいと思ってしまいますね。

古泉:本当にそう思います。“実親の親権強すぎ問題”の改善は、声を大にして求めていきましょう。

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「もう離れ離れにならない」という安心感

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