はあちゅうのセクハラ告発に「同じで驚いた」と音楽業界の女性。トイレに行くだけで怒鳴られて…
12月17日、人気ブロガーのはあちゅうさんによるセクハラ・パワハラ告発記事がBuzzFeed Japanに掲載され、話題になっている。
彼女が電通勤務時代に、同社クリエーターの岸勇希元氏(現在は独立)から受けたという行為や暴言は、教育や指導の範疇を越えているもので、広告業界のパワハラ・セクハラ体質が明るみになった。
でも、これは一部の業界に限らず「珍しいことではない」という人もいる。
「はあちゅうさんの告発記事を読んで、私が経験したことと一緒で驚きました」
そう語るのは、誰もが知る音楽系エンタメ企業で働くA子さん。詳しい話を聞いた。
5年前、同社に入ったA子さん。大学時代はミスコン常連、タレントとしても活動するなど華やかな学生時代を送った。
入社後、A子さんが配属されたのは会社でも花形とされるチーム。カリスマ的人気を誇るアーティストと仕事ができる……と希望を胸に抱いたA子さんを待っていたのは、ハラスメントの嵐だった。
「チームの男性上司はなにかと私に声をかけてくれました。自分でいうのもおこがましいですが…容姿には自信がある方ですし、最初は受け入れていたんです」
ところが、次第に増える飲み会の誘い、業務時間外での呼び出し、身体への接触。
「どんどん感覚がマヒしてしまって『普通のことなんだ』と当時は思い込んでいましたが、今考えるとおかしなことがたくさんありました」
A子さんが経験したというハラスメントの数々を記しておこう。
電話応対は新人の仕事、離席する時は上長の承認を得るのが決まりだったという。
「電話を取るのが新人の仕事というのはわかるんです。でも離席する理由を言わなければいかず、トイレに行っていいかすら聞きかなくてはいけない。しかも、嫌そうに『早く行けよ!』って怒鳴られるんです。昼休みもろくに取れないので、トイレでおにぎりを食べたこともあります」
新人なら仕事ができないことも当然ある。指導に熱が入りすぎて…では片付けられない過剰な説教があったようだ。
「ミスしたこと自体は弁解のしようもありません。でも必ずみんなの前で説教。2時間以上になったこともざらで、何度も同じことを繰り返し怒られ、『顔だけで入社してきたのか』とか『親からどんな教育を受けてきたのか』とか、人格を否定するような説教もあって。
はじめは『次から気をつけます』と謝っていたんですが、毎日、長時間責められ続けるとどう受け答えしたらいいかもわからなくなってしまいました。受け答えが気に入らないと、パイプ椅子を投げられたこともあります」
他の社員は誰も手を差し伸べてくれなかったのだろうか?
「彼はクリエイティブな才能はある人でしたから、誰も逆らえない空気がありました、今になって一番腹がたつのは、“お前を気に入っているから怒っているのだ”という態度ですね」

その上司は、飲み会に必ずA子さんを連れて行き「AV女優の〇〇に似てるでしょ!」と紹介するのが決まり文句だった。
「それを聞いた相手のニヤニヤ笑いが本当に気持ち悪くて。毎日怒られ続けてたのもあって、ああ、私ってコンパニオン要員でしかないんだなと思いました。時間は昼夜問わずで、真夜中に寝ている時も呼び出しがかかりました。しかもワンコールで出ないと怒鳴られるんです。なんで俺の電話にすぐに出ないんだ、って。
さすがに枕の強要まではありませんでした。でも身体をなでられたり、その後のことをほのめかされたりはしました。断り続けたので余計嫌われたのかも……」
度重なるハラスメントに心身ともにくたびれていたA子さんに、さらに追い打ちをかけるような出来事が起きる。
「その上司の海外出張に同行するよう言われたんです、私の仕事とは全然関係ないので本当に嫌でした。
しかも、他の上司もかばってくれるどころか、『A子にはいろんなことをしてもらわないといけないからね』と……。冗談だとはわかっていましたがこれ以上耐えるのは無理だと思いました」
こうして耐えられなくなったA子さんは異動願いを出した、今は華やかな部署を離れ、人前には出ない地味な部署に変わった。
人事に訴えようかとも考えたが、この会社全体の雰囲気が信用できず、また女性も「女」を利用してのし上がろうとしている人も多く、目をつけられては会社にいられなくなると考えて泣き寝入りしたのだそう。
最後に、「私は逃げてしまいましたが、理不尽なハラスメントで夢を妨害されない社会になってほしいと願っています」とA子さんは話していた。
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海外に目を向けると、ハリウッドで火を噴いたセクハラ告発の動きは、音楽業界にも広がっている。
ノルウェーでは音楽業界の女性1001人が、業界にはびこる性暴力に対して連名抗議文を出し、大手新聞「アフテンポステン」(11月23日)に実名とともに掲載された。 隣国スウェーデンでも、音楽業界の女性約2000人が新聞「ダーゲンス・ニュヘテル」(11月17日)に同様の連名抗議文を発表した。
<TEXT/女子SPA!編集部>
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