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子供のやる気を引き出すには?青学大V4を支えた寮母・原美穂さんの名言

 2018年、箱根駅伝4連覇を達成した青山学院大学。メディア出演も多い原晋監督は昨年末のヒットドラマ『陸王』(TBS系)に登場するなど、テレビでもすっかりおなじみの存在となっています。

 その監督の妻で、学生を寮母として支えてきた原美穂さんをご存じでしょうか。送り出した卒業生はこの13年間で約140人。

原美穂さん

青学陸上競技部町田寮にて、学生たちと美穂さん(中央)

「未成年から社会人になる時期の彼らに密着取材できたような気がしていて、思いがけず最高の仕事にめぐり会えたなと思っています」と言う美穂さん。

 ただし美穂さんは、自ら望んで寮母になったわけではありません。前回の記事でご紹介したとおり、2004年に“わがまま”な夫が安定した職を捨てて監督になったのと同時に、美穂さんもほぼ自動的に寮母になったのです。

 以来、2009年の33年ぶりの箱根駅伝本選出場、2015年の初優勝、2017年の史上初の三冠三連覇、2018年の箱根駅伝4連覇と青学駅伝の黄金期を学生たちと共につくりあげてきました。

 個性のある一人ひとりを育てるにはどうしたらいいのか…子育て中の人にとっても、興味があるテーマではないでしょうか。

 美穂さんの初の著書『フツーーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉』(アスコム刊)とインタビューから、その「育てる手腕」を探ってみました。

ルールは自主的に決めさせる。ガミガミ怒るのは逆効果



 現在、青学の駅伝ランナーたちが暮らす青学陸上競技部町田寮には、遊びたい盛りの男子学生にとっては、厳しいルールがいくつもあります。門限は10時、朝は5時半に練習場に集合。部屋は2人部屋。食事は全員が食堂で一緒にとり、部屋での飲酒は禁止。

 茶髪も禁止で、ギャンブルはもってのほか。その一方で、掃除や食事の配膳は学年やタイムとは無関係に、全員が平等に交代で担当する。こうしたストイックな生活を選んだのは、ほかならぬ学生自身だといいます。

 美穂さんが寮母になって最初に迎えた箱根駅伝の予選会を、青学は16位で終えました。もちろん予選落ちです。

「学生たちはそのときに、このままでは絶対に本選出場は無理だと悟ったのでしょう。自発的に、今の生活を変えたいと言いだしたのです」(美穂さん、以下同じ)

 それまでは、たいていのことが自由で緩かった寮生活に、ぴりっとした空気が漂い始めた。

「音(ね)を上げる子もいました。でも、箱根を走るためにはどんなことでもしたい、厳しいルールも守りたいと自主的に思った子たちは、歯を食いしばってそれを守りました。自分たちで決めたルールなのだから、という思いもあったでしょうね」

 そう振り返る美穂さんは、あることをしなくて良かったと心から思っているそう。

「もし、わたしがしびれを切らして、生活態度のあれこれをガミガミと注意していたら、学生は素直に聞かないどころか、反発する気持ちを持つ子もいたでしょう」

 学生が気づき、変えたいと思うまで待ったことが、今の青学の強さの基礎となっているのです。

「どうせダメでしょ」という応援の仕方もある



 でも、学生を放任しているわけではありません。寮で暮らす学生が、「奥さん、聞いてくださいよ」と声をかけてきたときには、話をじっくり聞く。ちなみに学生は全員が美穂さんのことを、「奥さん」と呼んでいます。

原美穂さん

原美穂さん

『聞いてくださいよ』というのは、“ほめてアピール”です。ほめてほしいときに、彼らはこの言葉を使うんです」

 大会でいい結果を出した、タイムをグッと縮めた、などという努力の結果だけでなく、新しいトレーニングに取り組もうとしているという姿勢をほめてほしがる学生もいるのだとか。そういうとき、あえて突き放すこともあるといいます。

「『どうせダメでしょ、3日間くらいしか続かないんじゃないの?』とあえて言うことがあります。ほめてもらいたがっている子は、成長したいという意欲があり、その自信もある子。だから、『そんなことないですよ』『できますよ』と返してきます。これで、約束の成立です

 3日経ったら、約束が守られているかこちらから確認します。すると『当たり前じゃないですか』と返ってくるので、今度は『でも三日坊主だね、1週間は続かないね』と言うと、また『そんなことないですよ』『できますよ』となるんです」

 一方で、ケガをしたり伸び悩んだりしてナーバスになっている学生に対しては、「どうせダメでしょ」などとは決して言いません

「そういうときはどんな子も、ほめてほしがる余裕を失います。表面上は明るく振る舞っていても、孤独に陥っているんです。そこでわたしから『どうなの』と声をかけて、話したいようなら話してもらいます。話したくないようなら、無理強いはしません

やるのは本人たち。支える側が焦ってはダメ



 主役は学生、と言い切る美穂さんは、かねてから平常心であることを心がけてきたそう。その理由は、自分自身は当事者ではない、と自覚しているところにあります。

「就任時、監督もわたしも、大学側からリクエストされていた通りに、3年以内に学生に箱根路を走らせたいと思っていました。当時の、実力が十分とは言えなかった学生たちも、ごくわずかな可能性に賭けていました。

 こういうとき、一番辛いのは、頑張っても叶わなさそうな夢に向かって努力する学生自身です。わたしのように支える立場のつらさなど、比べものになりません。

 それなのに、もしも支える側のわたしまで焦ったり、不安になったりしたら、学生にそれが伝わってしまいます。それは、支える側の人間が決してしてはならないことだと思います」

 この心構え、受験生を抱える親や、会社で新人育成を任された中堅社員にも、共通するものではないでしょうか。

原美穂さん著書

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 絶対的王者として迎えた2017~2018年の駅伝シーズン、青学は出雲駅伝で2位、全日本大学駅伝では3位に終わっていました。そして迎えた2018年の箱根駅伝でも、往路は2位だったのが最終的には頂点に立ちました。

 そのドラマチックな逆転劇の背景には、優しくもクールな寮母の“支える力”があったのです。

<TEXT/女子SPA!編集部>
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女子SPA!編集部
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