死の予行演習!?「入棺体験」がこんなに気持ちいいなんて
終活に生前葬と、寿命をポジティブにとらえるのが昨今のブーム。その最終形は「入棺(にゅうかん)体験」ではないでしょうか。
入棺体験とは、文字通り棺(ひつぎ)の中に入ること。生前に棺に収まるなんて、めったにできることではありません。恐いもの見たさ半分の妙なテンションで、イベントに参加してみました。
訪れたブルーオーシャンカフェは、南国ムードいっぱいの明るいカフェ。設置してある棺には虹色の布がかかり、祭壇もピンク色で、暗い雰囲気は少しもありません。ファシリテーターには現役のお坊さんが3名いて、カジュアルさの中に荘厳(そうごん)さも匂わせていました。
参加者は男女合わせて約10名。年齢層は30代~40代と、死からはまだ遠そうです。全員で輪になり、入棺に対する意気込みを誓い合ったところで、いよいよ本題へ。
ふたり一組になって、「あなたは誰ですか?」という、ひとつの質問を繰り返します。聞かれた方は「女です」「猫が好きです」「さみしいです」というように直感的にこたえていくのです。
たった3分間のワークですが、薄紙を一枚一枚はがすように、自分がむきだしになっていきました。
自分のお葬式を想定し、夫や妻、友人、孫、そして架空の人物やロボット、ペットなどが書いた体で、自分で弔辞(ちょうじ)、つまり「お別れの言葉」を書くのです。
私は飼い猫になったつもりで自分の弔辞をしたためました。するとあら不思議、書いている時点で涙腺がゆるんでくるではありませんか。これまでの人生に酔う感じでしょうか。
ナンバーワンじゃないけれどオンリーワンの自分は尊いんだ、と嗚咽(おえつ)をもらしそうになった頃に、満を持しての入棺です。
Tシャツにジーンズ姿だったお坊さん3名が、いつの間にか袈裟(けさ)に着替えていらっしゃる。希望者には弔辞も読んでいただけるとのこと、せっかくなのでお願いしました。
思えば、からっぽの棺を目の当たりにしたのは初めてかもしれません。棺というのは常に誰かが横たわっていましたし、自らが進んで入るものではないのです。
当初、危惧していた恐怖や不安は、片足を踏み入れたとたんに払拭され、神様の吐息が降りそそいでくるような心地よさを感じました。
「恐かったり、苦しかったりしたら、内側からふたを叩いてください」ファシリテーターさんの助言を最後に、ふたがぴたりと閉じられました。
「自分を見つめる入棺体験~棺の中で耳をすませば~」
ワーク1「Who are you? あなたは誰ですか?」
ワーク2「お別れの言葉。弔辞のワーク」
いよいよ棺の中へ…
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