本の中でもたくさん登場する犬やネコちゃんたち。しかし避けて通れないのは彼らの死。それは悲しいことだけれども、だからこそ気づいたことがあると言います。
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本当にしょっちゅう思うのですが、過去や未来を案じて今を失うのは人間だけです。動物達はいつも、今を生きてる。死ぬことも生きることの延長線上にあるという究極の悟りを開いているかのようにすら思う。>(p.51)
この文章を読んでいて、ある曲を思い出しました。“僕らは同じ場所をぐるぐると漂っているだけだから、泣くことなんてないんだよ。また会えるその日まで、バイバイ”。(「I Wave Bye Bye」Jesse Winchester 筆者訳)
石田さんの地に足の着いた雰囲気は、犬やネコを見つめるまなざしから来ているのかもしれませんね。
最後は、石田さんが高校時代に何度も読んだという『なまけ者のさとり方』(著:タデウス・ゴラス 訳:山川紘矢・山川亜希子 PHP研究所刊)から得た思考法。自分のことしか考えられない状態からどうやって抜け出すかを語っています。
(C)文藝春秋
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もうひとつ、これもうまく説明できないんですが、自意識をいったん消して、自分を筒状の、トイレットペーパーの芯のようなものだと想定するんです。その穴の中にぐるぐる周りの空気を循環させる。そうして世界をみると、自己から離れて、周囲がクリアに見渡せる。>(p.142)
そうやって自分だとか自分以外だとかの区別をなくしてしまって、誰でも存在できる「スペース」のようなものになれたときこそ頭が冴えているというのですね。
うーん、これはなかなか難易度が高そう……。
というわけで、この『Lily――日々のカケラ――』。石田さんのインスタグラムをチェックしているわけでもない男性の筆者も楽しめましたし、何より様々な角度から気づきを与えてくれる一冊だと思いました。
<TEXT/比嘉静六>