このように世論が後押しする賞なので、支持率アップのため政権に利用されてきたのではないかと見る向きもあります。
朝日新聞の記事(2008.12.20)によると、国民栄誉賞を贈ったあとに内閣支持率がアップしたのが9回、ダウンしたのが4回、横ばいだったのが2回だったとのこと。でも支持率がアップしたケースも、気休め程度の上げ幅なんですよね。
高橋尚子が受賞したときには、「なぜヤワラちゃん(谷亮子)にはあげないんだ!?」と官邸に電話が殺到したとか
高橋尚子選手に授与したあと5ポイントも下げた森喜朗総理をはじめ、サッカーの「
なでしこジャパン」に贈った菅直人総理や、レスリングの
吉田沙保里選手に贈った野田佳彦総理の不人気ぶりを思い出せば、あまり関係ないのがわかります。
逆に、長いこと人気だった小泉純一郎総理が誰にも賞をあげていないのも面白い。イチロー選手は本人が辞退を申し出たそうですが、その他は小泉氏の判断。金メダルラッシュに沸いたアテネ五輪では「前人未到」に該当する選手が多かったので、まとめて紫綬褒章をあげちゃったんですね。なんとも小泉さんらしい解決の仕方です。
もちろん、今回の安倍総理にまったく政治的な意図がないとは申しませんが、マツコさんが心配するほど政権浮揚の効果はないと言っていいでしょう。
羽生選手はすごい!でも賞自体は「大したことない」?
さて、この件で「
国民栄誉賞なんて大した勲章じゃないんだからどんどん出すべき」と言った木村太郎(3月2日放送『直撃LIVEグッディ!』)が炎上してしまいましたが、ある意味当たっているような気もします。
受賞者が大したことないわけじゃなくて、賞の根拠自体がテキトーなのだから、世間的にOKならあげときゃいいじゃんってぐらいのごほうびなんですよね。
それなのに仰々しく“国民栄誉”なんて言うもんだから、マツコさんみたいに「文化勲章に匹敵する」と感じる人も出てくる。だったらもうちょっとカジュアルなネーミングにしたらいいと思うけど、ありがたみが薄れちゃうのかなぁ……。なんかいいアイデアないですかね。
注1:読売新聞1996.09.01より
注2:毎日新聞1987.08.19より
<TEXT/沢渡風太>