女性が感じる30歳前後のモヤモヤ…。女性監督が語るリアルな『29歳問題』
30歳を目前に転機を迎えたヒロインふたりの姿を見つめた香港映画『29歳問題』が、日本の女性にも共感を与えています。
バリキャリ女子のクリスティが、とある事情から海外旅行中の女性ティンロの家を借りることに。ティンロの日記から、ささやかな日常を笑顔で暮らす幸せを感じ、クリスティの心に変化が訪れていきます。
2005年より本作の原作舞台である一人舞台『29+1』の製作・脚本・主演を務め、本作で監督デビューを果たしたキーレン・パン監督が来日。話を聞きました。
――国が違っても、女性たちの思いは同じだと感じました。仕事、友達との会話、年老いてきた両親のこと、恋愛……。
監督:そうですね。同じですよね。
――2005年から監督が上演してきた舞台作品がもとですね。
監督:2005年当時、私自身が30歳にさしかかっていました。新しいものに挑戦したくなり、脚本を書いてみようと思ったんです。初めての脚本でしたので、自分自身の思いが投影された作品を書きました。自分で演じることも決めていたので、楽しく、そしてチャレンジできるものにしようと、両極端なヒロインふたりを登場させる一人芝居にしました。
――原題は『29+1』です。
監督:「+1」にはいろんな意味合いがあるんです。ずばり30と言えばいいのに、そこに女性の心情が表れています。30という数字は見たくない。それに、1はなにを表しているのか。1歳なのか、1年なのか、1歩なのか。いろいろ受け取れると思います
――映画化に向けた脚色で気を配った点はどこでしょうか。
監督:主役ふたりの違いを際立たせることです。働く環境、上司、住んでいる部屋、服装、映画全体の美術も、ふたりの違いをより明らかにしていきました。
――クリスティはティンロの部屋を借りて住むことになります。そしてティンロの日記を読みます。彼女たちの出会いを、ティンロそのものである部屋に住むことにしたのが素晴らしかったです。
監督:クリスティはティンロの部屋に入ることで、彼女の世界に入り込む。そして彼女の日記を開いて読むという行為は、自分の心に、ティンロを受け入れたのだと見ることができます。
――映画的な映像がとても印象に残りました。エスカレーターでビジネスマンがすれ違う象徴的なシーンだったり、お父さんとの病室のシーンだったり、ハッとするシーンがいくつもありました。
監督:挙げていただいたふたつのシーンは私のアイデアです。ただ、映画的なシーンが多かったと思われるのは、間違いなくカメラマンのおかげです。たとえばエスカレーターのシーンは、多くの人が登場してひとつのハーモニーを作る、コーラスワークといいますが、こういう処理は非常に舞台的と言えます。
現実を抽象化して、味気のないサラリーマンのイメージを見せる。非常に演劇的な演出ですが、そうしたアイデアを、カメラマンが技術を生かして映像的にしてくれました。
プラス1が意味するもの
日記を読むことで他者を心に受け入れる
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『29歳問題』は5月19日よりYEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国順次公開
配給:ザジフィルムズ / ポリゴンマジック