正しさと親切さ、どちらをとる?『ワンダー 君は太陽』の監督が投げかける問い
ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン共演の感動作『ワンダー 君は太陽』が公開になりました。
原作は800万部突破のR・J・パラシオの児童文学。生まれつき人と顔立ちが違う10歳の少年オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)と、周囲の人々の物語です。脚本も務めたスティーヴン・チョボスキー監督(『ウォールフラワー』)に話を聞きました。
――嗚咽しながら拝見しましたが、決してお涙頂戴にはなっていませんでした。作り手の思いが暴走することもなく、一歩引いて描いているからこそ、余計に観客ひとりひとりの心に伝わる作品になったのかと。
監督:ありがとう。エモーショナルな物語を綴るときには、泣かせよう! という気持ちはないんだ。観客へのリスペクトを持ちつつ、僕の持っている感情、気持ち、こう感じてもらえたらうれしいです、とご招待しているだけ。それを受けてもらえるかは観客次第で、僕が決めることではないからね。
――監督が原作から強く感じた魅力はどこですか?
監督:エンパシー、共感力、思いやり。オギーの物語だけだったら脚色しようとは思わなかったと思う。これはオギーの姉ヴィアの物語でもあり、彼女の友達ミランダの物語、オギーの友達ジャック・ウィルの物語でもある。そういったことが、僕に情熱を感じさせてくれた理由になった。
――ジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソンが両親を演じています。彼らとはどんな話をされたのでしょうか。
監督:自分たちの子供たちのこと。親であること、かな。ジュリアもオーウェンも役者として完成されていて、とてもプロフェッショナル。シーンへのアプローチについての話し合いもしたけれど、現場で楽しみながら自由に作り上げていってくれるんだ。それを見ていて僕も本当に楽しかった。お菓子屋さんに行った子供のような気分だったよ。
――子どもたちについて、各々のキャラクターへの理解をどのように深めていったのでしょうか。
監督:子供たちと、そういった話はあえてしていないんだ。機会も設けていない。最初のホームルームでオギーが子供たちの間を歩いていくシーンがあるよね。あの時、子供たちは、メイクをしてオギーになったジェイコブを初めて見たんだ。リアルな反応を捉えたかった。だから、あの時の子供たちの表情は本物なんだ。
映画でも原作でも、僕がいいなと感じているのは、「フェイシャルディファレンス」(オギーのような顔の障がいの英語における呼称)が普通になる、標準的なものとして受け止められるようになっていくこと。受け止められるようになるからこそ、受け入れられるようになる。それこそ、人種であれ、性的思考であれ、ジェンダー、髪の色、目の色、髪型まで。違いを通常のものとして感じれば、受け入れられるようになるし、それってすごくパワフルなことだと思う。
――観客の感想、反応で印象に残っていることを教えてください。
監督:一番の思い出はアメリカのプレミアの夜のときのこと。モーガンという11歳のフェイシャルディファレンスの女の子が、「これが私の一番のお気に入りの作品になりました!」と言ってくれた。心からうれしかったね。それから直接言われたわけではないけれど、アメリカの政治家が機内で観て、自分の政党と意見が合わなくなったときにも、ちゃんと自分の意見を言おうと決意したと話したそうだよ。
オギーの物語だけだったら脚色しようとは思わなかった
違いを通常のものとして感じれば、受け入れられるようになる
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『ワンダー 君は太陽』は6月15日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開中
配給:キノフィルムズ / 木下グループ
配給:キノフィルムズ / 木下グループ