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発達障害は“親の愛情”と関係ない。少年Aへの診断ミスが生んだ悲劇

新幹線殺傷事件と発達障害

 以前から司法関係者は「自閉症スペクトラム障害」と診断することについて、きわめて消極的でした。その理由のひとつには、先天的な障害は「責任能力の有無」に深く関わり、その後の審判や裁判に大きく影響するということが挙げられます。  今年6月に東海道新幹線「のぞみ」で3人を殺傷して逮捕・送検された小島一朗容疑者(22)も、5歳の頃、児童保育所から自閉症スペクトラム障害の疑いを指摘されたのに、親は病院にも行かせなかった……と報道されました(週刊文春6月21日号、父親もインタビューで認めている)。また、母親の地元の記者クラブ宛のコメントとして「一朗は小さい頃から発達障害があり大変育てにくい子でしたが、私なりに愛情をかけて育ててきました」ということも発表されました。  この事件の裁判も責任能力が争点になるのではないかと思われます。  誤解がないように何度も言いますが、自閉症スペクトラム障害を持つ人が犯罪や事件を起こしやすいということではなく、逆に被害者になることも多いのです。これまでの加害少年たちにこうした障害があったとしても、それは、周囲が正しい理解や適切な支援をしなかったために起こった「二次障害」と考えるべき事例もあります。  それを防ぐためにも、情報を共有すること、そして障害の早期発見や認知、適切な療育、支援が不可欠なのです。 ※『となりの少年少女A』では神戸連続児童殺傷事件、佐世保小六女児同級生殺害事件、伊豆タリウム少女母親殺害未遂事件、奈良エリート高校生放火殺人事件、佐世保高一同級生殺害事件、名古屋大学女子学生老女殺害事件、フロリダ州パークランド高校銃乱射事件と、その他の少年事件も再検証をしている。 <文/ジャーナリスト・草薙厚子> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
草薙厚子
ジャーナリスト。元法務省東京少年鑑別所法務教官。著書に『ドキュメント 発達障害と少年犯罪 』『本当は怖い不妊治療』『となりの少年少女A』など多数
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