毎日1人の子が虐待死している。私達にできることは?虐待防止プロジェクトが本格始動
今年3月、東京・目黒区のアパートで船戸結愛ちゃん(当時5歳)が虐待の末に死亡した事件。覚えたての平仮名で「おねがい ゆるして」とノートに書かれた両親に許しを請うメッセージは、多くの人の心を揺さぶりました。
SNSではタレントの眞鍋かをりさんらが「#こどものいのちはこどものもの」「#ひとごとじゃない」「#児童虐待問題に取り組まない議員を私は支持しません」などのハッシュタグを拡散しているのが話題になっていますが、そのムーブメントの中心になっているのが、「なくそう! 子どもの虐待プロジェクト2018」。共同発起人には児童福祉業界のみならず、経済界、芸能界に至るまで、150人以上の著名人が名を連ねています。
6月21日、同プロジェクトが発足の趣旨と活動の進捗を説明する記者会見を実施。特別養子縁組や子育て支援など行う、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏をはじめとする発起人代表5名が登壇しました。
結愛ちゃんの事件は氷山の一角に過ぎないと駒崎氏は言います。
「小児学会の推計では、毎年350人ほどの子どもが虐待死しています。つまり、毎日約1人の子どもが虐待で亡くなっているんです。今回の事件の悲しみをバネにして、虐待死がない社会をつくっていかなければならない。そのためには制度を、そして予算を変えなくてはいけないんです」
児童虐待防止に割かれる国の予算の対GDP比は、アメリカの130分の1、ドイツの10分の1だという日本。また、児童相談所(以下、児相)の数も全国で250箇所しかなく、60万人に対して1つという割合です。イギリスの30万人に対して1つ、という割合と比べると、かなり少ない状況にあるそう。
「その少ない児相の職員もまた少ないんです。いま、東京都の児童福祉士、つまりケースワーカーが抱えるケースは1人につき120件。欧米では1人につき20件が目安と言われているので、日本はその5~6倍のケースを対応しなければならないというしんどい状況です」(駒崎氏)
結愛ちゃんの事件では、児相間、また児相と警察との間での情報共有不足や、虐待の疑いがある家庭に積極的に踏み込めなかったことが問題視されていますが、“児相叩き”をするだけでなく、制度や仕組みから改善していかなければならないと発起人代表らは訴えます。
同プロジェクトは現在、専門家や児相の関係者らとコミュニケーションをとりながらまとめた、現状の制度を抜本的に改善するための8つの政策を国や都に対して提言するネット署名キャンペーンを行っています。
「約1週間で10万人近い方々が署名してくれました。これはすごいスピードだと思います」と駒崎氏。集まった署名は、今月25日には加藤厚生労働大臣に、29日には小池都知事に直接手渡すことになっているそう。
8つの政策では、包括的な性教育の必要性にも触れられています。質疑応答でその点について質問が及ぶと、
「虐待死のおよそ半分は0歳。生まれた瞬間に、公園のゴミ箱などに捨てられているんです。この状況を俯瞰して見ると、正しい性教育が虐待死の防止へと川の底流でつながっているんです。包括的な性教育を行うとともに家族のあり方が学べるようにするべきです」
と駒崎氏。足立区の中学校が行った性教育の授業内容(避妊や人工妊娠中絶に言及)に対し、3月に都議会で「指導要領を逸脱している」と古賀俊昭都議が物言いした一件にも触れ、過度な政治的介入は憂慮すべきだとしました。
その後、質疑応答の中で、日本における親権停止の難しさ(ドイツが年間1万2000件を超える親権停止を行い子どもを守っているのに対し、日本では年間約80件に留まっている)や、問題のある親から子どもを離したあとの取り組み(一時保護、里親・特別養子縁組)の現場におけるさまざまな課題などについても話が及びました。
毎日約1人の子どもが虐待死している
虐待死のおよそ半分は0歳
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