DA PUMP「USA」が大ヒット、ISSAの“才能のムダづかい”がカッコいい
新曲「U.S.A.」の“ダサかっこいい”ダンスで再ブレイクを果たしたDA PUMPの勢いが止まりません。YouTubeの動画再生は2000万回を突破し、7月25日放送『FNSうたの夏まつり』(フジテレビ)に続き、7月28日放送『SONGS』(NHK)への出演も決まりました。

度重なるメンバーチェンジを経て、オリジナルメンバーはISSA(39)ひとりになってしまいましたが、相変わらずすさまじい歌を聞かせてくれます。
なつかしいユーロビートのカバーなのですが、むしろボーカルの切れ味が際立って聞こえるのが興味深いところ。お得意のR&Bや、最初のソロアルバムで披露したレニー・クラヴィッツのようなハードロックでも勝負できるのに、あえてそこを外してきた。
ガチのアーティスト路線ではなく、ユーモアをまじえてエンターテイメントを提供する。その余裕と慎ましさが、ISSAの価値をさらに高めていると感じたのです。
というのも、シーンを見渡すと、ちょっとマジメすぎる人が多いような気がするからです。たとえば音楽番組を見ていても、目をつぶって熱唱して“気持ち伝わってますか”とか、“頑張って汗かいてます”みたいな人が多すぎると思いませんか?
一生懸命なのはわかるけれども、そうやって熱くなられるほどにエンターテイメントからは遠ざかってしまう。高校の文化祭を見ている気持ちになって、萎えてしまうのですね。
「U.S.A.」の意義は、そんな青臭い傾向に一石を投じた点にあるのではないでしょうか。ISSAというスーパーなボーカリストが、才能をムダづかいしてまで客を楽しませる。ダサい振り付け、ダサいサウンド、ダサい歌メロを、実にクールに操っている。パフォーマー自身が何をしているのか、そしてそれが見る人にどのような影響を与え得るのかを考え抜いている。
マジメの方向性と質が違うのですね。客が見て分かる努力など、努力のうちに入らない。そんな成熟した厳しさがISSAの歌を研ぎ澄まし、“ダサかっこいい”というコミカルと真剣さの絶妙なバランスを保っているのではないでしょうか。
最後に、ISSAの器のデカさを感じたエピソードをご紹介しましょう。新メンバーの大所帯になってからのDA PUMPはなかなかヒットに恵まれませんでした。そこへきて、「U.S.A.」の大ヒット。これを喜ぶISSAのコメントが泣かせるのです。
「メンバーのみんなにも、おじいちゃんやおばあちゃんがいるんですよ。やっぱり活躍しているところを見せてあげたいじゃないですか。頑張ってやってきた成果を、ちゃんと形にしてあげたいとは、強く思ってます」(日刊スポーツ 6月13日配信記事より)
まだ39歳なのに、田中角栄みたいなことを言ってのけるISSA。人を楽しませるには、まず人の心を知れ。再ブレイクは決して偶然ではなく、彼の粘り強い良識がもたらしたギフトだと感じるのでした。
<文/音楽批評・石黒隆之>
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DA PUMP「U.S.A.」が“ダサかっこいい”わけ
“才能のムダづかい”をしてみせるISSAの器
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4