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アメリカ人がインディアンジュエリーをつけない理由|映画『ウインド・リバー』

 80年代後半から90年代前半にブームになったアメカジや渋カジ。ネイティブアメリカンアクセサリーの高級ブランドであるゴローズを身につけるのは当時の若者の憧れでした。一時のブームは去ったものの、インディアンジュエリーの根強いファンはいまだに一定量います。

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 とはいえ、アメリカでは、アメリカ先住民が住む地域の人々やヒッピー風の人々以外、インディアンジュエリーを纏う人はほぼいません。それはなぜなのでしょう? 90年代の映画や7月27日(金)に公開されるサスペンス映画『ウインド・リバー』に、その答えが隠れているような気がします。

スピリチュアルか、悪役か。映画で描かれるアメリカ先住民


 第二次世界大戦前のハリウッド映画において、ゲイリー・クーパーやジョン・ウェインの西部劇に登場するアメリカ先住民は、白人女性や子供の安全を脅かす存在として描かれてきました。

 しかし、戦争が終わり、1960年代の公民権運動が盛んになるとアメリカ先住民を悪者に仕立てることはタブーに。そこで、台頭してきたのが、スピリチュアルな存在としてのアメリカ先住民。確かに、アメリカ先住民の文化は多様性に富み、部族が住む土地が生み出した自然観、宇宙観、創造神話や霊魂世界に基づいた土着の宗教がありました。

 こういったスピリチュアルな部分を切り取って、アメリカ先住民をロマンティックな存在として描写する映画が、90年代に登場しました。北軍の軍人がスー族の一員となるケビン・コスナー監督/主演作『ダンス・ウィズ・ウルブス』(1990年)や、先住民のモヒカン族に育てられた白人が最後のモヒカン族になるダニエル・デイ=ルイス主演『ラスト・オブ・モヒカン』(1992年)に代表されます。

ダンス・ウィズ・ウルブス

Amazonより

 そして、映画『ポカホンタス』(1995年)は先住民の娘ポカホンタスとイギリス船のキャプテン、ジョン・スミスの恋を描いたディズニー映画。異人種間の恋愛を描いた初のディズニー映画という点では画期的ですが、ポカホンタスがいとも簡単に白人と恋に落ち、先住民の戦士だけが死んでしまうことなど、白人に都合よく描かれているようにも見られます。
 ちなみに、ポカホンタスはイギリスに渡り、イギリス人と結婚して社交界で活躍した実在の先住民女性ですが、ジョン・スミスとの恋愛は脚色されたものだそう。

ロマンと差別の対象であるアメリカ先住民


 10年ほどアメリカに住んでいた筆者は、アメリカ先住民と直接知り合う機会はありませんでしたが、ミドルクラスの白人から先住民に対する相反する思いを聞いたことがあります。

 ひとつはロマンティックな思い。筆者が大学生のときに、アイビーリーグ(ハーバード大学をはじめとするアメリカの名門私立大学8校の総称)の学生の友人が数人いました。彼らが好んで話題にしていたのが、授業で教えるアメリカの歴史がいかに間違っているかという話。アメリカ先住民のほうが本当のアメリカ人なのに、彼らの歴史が教科書に載っていないのはおかしいというのです。

 いわゆるリベラルな知識階級の学生たちでしたが、自分たちには分からない“非西洋”の文化を理解しようとするあまり、非西洋文化を必要以上にロマンティックに捉える傾向がありました。例えばパーティーで、チベットのお経のビデオを皆で神妙な面持ちで鑑賞し、「なんてビューティフルでスピリチュアルなんだ!」と感嘆したり……。

アンテロープキャニオン

スピリチュアルな場所として知られる、ナバホ族の聖地、アンテロープキャニオン(アリゾナ州)。globeやSPEEDなどさまざまな日本人アーティストのPVが撮影された場所としても有名

 もうひとつは、人種差別。ある白人の同級生は先住民の保留地の近くで育ったことから、「インディアン居住地に住むと年金をもらえるから、あえて働かない怠け者が多いのよ、インディアンって。確かに白人が彼らにしたことは最低だけど、200年以上も経っているんだからもうカンベンしてよね」などと言っていました。

 あくまで筆者の主観ですが、映画に登場する“高貴でスピリチュアルなインディアン”“悪いインディアン”といったステレオタイプには、先住民に対する白人の奇妙な憧れや人種差別が投影されているのかもしれません。

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アメリカ先住民の“いま”と向き合う映画『ウインド・リバー』

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『ウインド・リバー』は2018年7月27日より角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
提供:ハピネット、KADOKAWA
配給:KADOKAWA
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