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ドラマ『この世界の片隅に』松本穂香演じるすずの瞳に注目

 こうの史代原作マンガを連続ドラマ化した、松本穂香主演『この世界の片隅に』(TBS系、日曜夜21時~)。第1話の視聴率は10.9%でした。
『この世界の片隅に』

『この世界の片隅に』TBS公式サイトより http://www.tbs.co.jp/konoseka_tbs/

 アニメ映画は’16年に公開され口コミで動員を伸ばし、高い評価を得ると共に大ヒットを記録しました。また’11年には北川景子主演のスペシャルドラマ版も放送されています。

あわただしく生きる現代人にこそ見て欲しい物語

 舞台は第二次世界大戦末期、昭和19年の広島県呉市。戦時下にあったこの町で、北條家に嫁いできた主人公・すず(松本穂香)の目を通じ、当時の人たちの暮らしや心情、そして戦争について描かれていきます。  第1話では子供時代のすずが「人さらい」につかまり、同じように捕まった少年と一緒に逃げ出すエピソードや、その9年後、大人になったすずを妻になってほしいと言ってきた男性はかつて一緒に捕まった少年・周作でしたが、彼女は思い出せず…とはいえ縁談は進み、2人はめでたく結婚というくだりが描かれました。  結婚式の夜、周作は「すずさんは、わしに力をくれるけぇ。あんたと一緒に生きていきたいんじゃ。よう来てくれたのぉ。」と優しく語りかけ、安心するすず。接吻を交わす2人の姿にドキドキした視聴者も多かったようです。    すずを演じる松本穂香は、朝の連続テレビ小説『ひよっこ』で注目され、今作では約3000人のなかからオーディションで選ばれた若手の期待株。すずの夫・周作を松坂桃李、周作の姉・径子を尾野真千子、そして周作たちの両親に田口トモロヲと伊藤蘭と、実力派の俳優がキャスティングされています。
 そのほかにも、遊郭の遊女・白木リン役に二階堂ふみ、すずの幼なじみの水原哲役に村上虹郎と、次世代を担う俳優たちも顔をそろえています。  ストーリーの性質上、ダイナミックかつ派手な展開はないものの、終始ドラマ全体を包む落ち着いたトーンと、緩やかに流れる時間がとても心地よく感じられる作品です。

戦争に翻弄されながらもたくましく生きるすずの瞳に注目したい

 また、ドラマオリジナル要素として、第1話では榮倉奈々演じる佳代という女性が、今は空き家となった2018年の北條家を訪れ、すずが嫁ぐ際に父から渡されたツゲの櫛(「スズ」の名前が入ったもの)をバッグから取り出す、というシーンがありました。現時点ではまだ詳細は不明ですが、彼女とすずの関係も今後少しずつ明らかにされていくと思われます。  なにより、約2時間ほどで完結する映画とは異なり、キャラクターの心情をじっくり丁寧に掘り下げることが可能なのが連続ドラマの魅力。そこはぜひ期待したいところです。  今クールでは『義母と娘のブルース』の綾瀬はるかや、『高嶺の花』の石原さとみなど、比較的やや前に出る女性ヒロインが多いなか、松本演じるすずの控えめなキャラクターは新鮮に映りました。  しかし、そんな彼女の前に容赦なく立ちふさがる「戦争」という大きな壁。自分に自信がなく、終始おっとりして伏し目がちな彼女が、時代の流れに翻弄されながらも最後にどんな表情を見せてくれるのでしょうか。  彼女の生きざまを通じて、現代に生きる私たちにはいったい何ができるのかを考えながら、静かに見守りたいと思います。 <文/中村裕一> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
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