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結婚してラクになりたい…「逃げ婚」した女性に待ち受ける罠とは

母から、育った環境から逃げたくて結婚

 子どもの頃から母親の過干渉にうんざりしていたアユミさん(32歳)。彼女の母親はかなり強烈である。 「社会人になって3年目の25歳のころ、ひとり暮らしをしようとしたら『あんたが家を出ていくなら、私を殺していきなさい』なんていうような母親ですよ。本当にやりそうだから怖くて出られなかった。母はことごとく私の人生をつぶしてきたんです。こんな親から逃れるには結婚しかないと思った」 親の過干渉 精神的には母親を突き放した気持ちでいたが、それでも日常的にうっとうしく、母の存在が重かった。なんとか結婚しようと友人たちに誰か紹介してほしいと頼んでいるところに現れたのが、高校時代の同級生だった。 「SNSで彼が見つけてくれたんですよ。実は私、高校時代、ちょっと彼のことが好きだったの。それもあって早速会おうということになって」  当時好きだったとはいえ、それほど彼のことを深く知っていたわけではない。だが、高校を卒業して10年近くたっていたこともあり、話は弾んだ。 「彼は自営業。WEB関係の仕事をしていると。実は再会したその日、そのまま彼の部屋に行って住み着いちゃったんです。親は大騒ぎでしたけど、1ヶ月後には双方の親と私たちだけで食事会をして、婚姻届も書いて提出しました。これで母親から逃れられる。私の人生は私のものだと開放的な気持ちになったのを覚えています」

“逃げ婚”の罠にはめられていたと気づく

 彼女は正社員、彼はフリーランスだから、家事はほとんど彼がやってくれた。いきなりの同居だったため、生活が落ち着いてきたころ彼女は経済的な分担について彼と話し合おうとした。 「すると彼、実はほとんど収入がないと言い出して。家賃はどうしているのか聞いたら、そのマンション、彼の親名義だったんです。ときどき生活費ももらっていたみたい。彼にどういう仕事をしてきたのか尋ねても、ろくに形が残っていない。これはどうしたものかと悩みました」 ほぼ無収入 しばらくすると彼の親から家賃の催促がきた。今までは息子ひとりだったからめんどうをみてきたが、これからはあなたが責任をもって家賃を払ってほしい、と。 「愕然(がくぜん)としましたよ。家賃が出なくてすむなら、彼の生活のめんどうくらい見てもいいかとちょっと思っていたんですが、家賃も生活費も私の負担ではとてもやっていけない。だからといって彼は別の仕事に就く気もない。逃げ婚しようとした私が、彼の逃げ婚に逆にはまってしまった。もう笑うしかありませんでした」  そんなことならひとりで暮らしたほうがよほどマシだと、彼女はシェアハウスを探してすぐに引っ越した。彼は経済的なことだけではなく気持ちも彼女に依存していたのだろう。警察に捜索願いを出した。 「両方の親を巻き込んで大変な目にあいました。結局、調停にまでなって2年かかってやっと離婚できた。ただ、唯一よかったのは私が離婚したから、母親が私を見放してくれたこと。これからひとりで生き直します」  アユミさんが笑顔を見せた。とてもチャーミングな笑みだった。  “逃げ婚”は、あとから考えれば「逃げだったな」と気づくことが多いようだ。そのときは、過酷な状況にいればいるほど、これで未来が開けると信じてしまう。「自分」を活かすことができる結婚、もっと自由な気持ちになれる結婚でなければ、人は今より幸せにはなれないのではないだろうか。 <文/亀山早苗> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【亀山早苗】 フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数
亀山早苗
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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