夫婦別姓を選べないことが仕事の足かせに…離婚・再婚を繰り返す人も
世界中の国々が法改正し、国民からのニーズも高まっているにも関わらず、日本ではいまだに法律で認められていない「夫婦別姓」。
前回は、婚姻時に夫婦同姓か夫婦別姓かを選べる“選択的夫婦別姓”の早期実現を目指す「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の活動や、その事務局長である井田奈穂さんが改姓により味わった精神的苦痛や煩雑な手続きによる苦労などを紹介しました。
改姓によって何かしらの不都合が生じる業種は少なくないのでしょうが、世間一般には広く知られていないのが現状。実は研究職もそのひとつで、「姓名と業績・論文が結びついているため改姓は大きな問題」とされています。今回は、そんな研究職に就いている方に実際の体験をうかがいました。
●加藤紗代子さん(仮名・37歳・研究職)
夫婦ともに研究職で、大学時代からの研究を就職後もずっと続けているという加藤さん。
「専門分野における業績や論文は研究者の姓名に紐づいています。つまり、姓名が変わるとこれまでの自分の業績や論文が検索結果から漏れ、評価・参照対象から外れてしまうことになりかねないんです。これは研究者としてのキャリア形成に大きなダメージとなるので、私は結婚後も姓を変えるつもりはありませんでした」
とはいえ、加藤さんが結婚した11年前は、いまほど女性活躍やワーキングマザーという概念が浸透していない時代。「キャリアのために改姓しない」という選択肢は両家の両親や親族の間で話し合いの対象にもならず、暗黙の了解のように夫の姓を名乗ることになったとか。
「幸い私は職場に恵まれ、仕事上は旧姓を名乗ることができ、研究成果・発表・論文を旧姓で記載し続けることができています。でも、国際学会・国際会議におけるパスポートと名刺の姓名の相違や、戸籍名での登録が必須となる国家資格とビジネスネームの不一致はその場その場で説明を求められ……。
夫婦別姓が制度として確立している国際学会などでは、事情が理解されにくく説明が大変なんですよ。しかもこの説明は、手続きを担当する職務の方々に強いられることもあるので、私の姓名が多くの人々に迷惑をかけているという気がしてなりません」
また、加藤さんの懸念材料になっているのが、転職した際に転職先で旧姓を名乗り続けられるかどうかということ。
「もし転職先で旧姓を名乗ることが難しい場合、研究者としてのこれまでの実績が途絶えてしまうので、転職してキャリアを発展させることができません。最近は研究所でも大学でも旧姓を名乗れるようになってきてはいますが、すべてではありませんからね。
私の知り合いの研究者のなかには、こうした事情により同じパートナーと離婚・再婚を繰り返している人もいます。私もそうしたいですが、普通はなかなか夫や親族からの理解が得られませんよね」
ここ数年、国際的な活躍や国家資格を活かした仕事が増え、ますます姓名の不一致を説明する場面が増えたという加藤さん。そうした現状や、旧姓を名乗り活躍する女性の増加を目の当たりにしてきたことにより、現在は「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」にも参加しています。
「法改正が実現したら、私はもちろん夫婦別姓を選択するつもりです。この件を親族に話したところ、残念ながらまだ曖昧(あいまい)な反応でしたが、国に認められればそれを理由に再度説明を試みてみます」

姓が変わると今までの実績がリセットされてしまうことも
夫婦別姓を選べないことで、同じ相手と離婚・再婚を繰り返す人も

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日時:2019年3月31日(日)13:00〜16:30(12:30開場)
場所:明治大学 駿河台校舎 グローバルフロント 1階多目的ホール