読者の知りたいことと、著者の伝えたい“真実”とは別だった
貴乃花は離婚後、「円満離婚ではないです」と言った。だが景子さんは著書の中でも「円満離婚」を強調する。その認識の違いが、結婚生活にも起こっていたのかもしれない。
個人的には、景子さんを非難するつもりはまったくない。結婚も離婚も個人の自由である。ただ、せっかく「
言えないことがたくさんあったけど、自分の言葉で伝えたい」とオビにまで書かれているのだから、読者が期待することに少しは応えてくれてもよかったのにと思わないでもない。

花田景子(河野景子)『ピンチも料理で救われます』 (2000年、世界文化社)
相撲のことしか考えられない夫についてはよくわかる。だが、一般社会人から見て、あの日馬富士がらみの暴行騒動のときの親方の態度や行動は、首を傾げざるを得ないものがあった。協会の人たちが自分の部屋に来ているのをわかっていながら車を発進させてしまったこと、話し合いを拒否し続けたことなどなど。隠蔽(いんぺい)されると思ったのなら、公開での話し合いを要求するなどメディアを味方につける方法だってあっただろうに。
彼がそうせずにただ黙していたのはなぜなのか、それを妻である景子さんはどう感じていたのか。
そして、せっかく興した部屋をなぜあれほどあっさり手放したのか。親子とも自認していたような弟子との関係をどう思っていたのか。
知りたいことはわからないままだが、彼女は「第三の人生を自分らしく生きていきたい」と述べている。
結婚も離婚も、自分の意志でするものだ。新しい扉を開けば別の世界が見えてくる。結婚はめでたいが、離婚もまためでたいものなのかもしれない。
<文/亀山早苗>
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