――内澤さんは警察へ相談されて、最終的にA氏には懲役10ヶ月(執行猶予なし)の実刑判決が下っていますが、その当時のお気持ちは?
内澤「反省してほしい、謝ってほしいという気持ちはもちろんありましたが、いちばんは自分の身の安全保障なので、私への接触衝動を含めて“無害化してほしい”と思いました。
事件を起こして収監されると、戻ったときに就職しづらいですよね。でも、社会的に孤立すると、ストーカーになりやすい気質がある人だけに、どこかで私が楽しそうに暮らしている様子を見かけて『あいつだけ楽しく暮らしやがって』って再発するかもしれないという恐怖があるんです。だから、きちんと就職すること、社会とつながることを願いました。
そう言うと、相手の更生を願っている優しい気持ちにみられがちなんですけど、違います。私自身の絶対的な安全保障のため。それだけです」

――たとえ相手が捕まっても、恐怖に脅かされる生活に変わりはないんですね。
内澤「彼はもう出所しているし、治療をしたわけでもない。どんな状況なのかを知ることもできません。なので、今も完全に安心はできないんです。
カウンセラーの先生にも、『いつも天敵がいる心構えでいなさい』と言われていますし、実際にそうだと思っています。なので、スマホの電池残量は15%以下にしないとか、すぐに動画を撮れるようにしておくとか、赤信号を待つときは車道からいちばん離れた場所に立つとか、相手が車で通りかかる可能性も考えて行動するとか、必ず注意を払うようにしています」
――ほかにも気を付けていることはありますか?
内澤「自宅は完全に公開していないですし、住民票の閲覧などもできないように、自治体に毎年申請を出しています。郵便や宅急便は局留めや営業所留めにしてもらったり、仕事関連の物は出版社へ送ってもらうようにしたり、できる限り自宅に人が来ないようにもしています。
それでも、ポストに届くものをゼロにするのは難しいので、どこからか住所が漏れる不安はずっとつきまとっていますね」
――被害者であるにもかかわらず、事件後も生活面でさまざまな苦労を強いられているのですね。
内澤「毎回荷物を取りに行く手間があるとか、冷凍品は頼めないとか、小豆島に来た友だちを自宅に泊めてあげられないなど、細かい不自由はありますね。それでも、住んでいるところは知られないようにしたいし、安全を脅かすリスクはひとつでも多く減らしたいと思うので、できるだけのことはやり続けなければという気持ちになります。そんな生活が一生続くのでしょう」
(インタビュー後編は後日公開予定)
<取材・文/千葉こころ 写真/山田耕司>
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自由とビールとMr.Childrenをこよなく愛するアラフィフライター&編集者。
人生後半戦も夢だけは大きく徒然滑走中