「夏祭りの日は、とても楽しくて。スーパーボールすくいや射的などで遊び、くじで子ども用のおもちゃが当たっておおはしゃぎしたり、りんご飴を何個も食べて…。まるで、夢の世界にいるようでした。休憩するために座ると、いい雰囲気になって、博之が手を繋いできたんです。寄り添って、幸せそうな家族連れを見ていました」

そして、博之さんが「俺もああいう家庭で育ったから、和美とも、あんな温かい家庭をつくれたらいいな」と何気なく言いました。
「そう言われたら、急に涙が出てきたんです。夏祭りに家族で行ったとか、誰にでもあるような楽しい思い出も、自分には全然ないなって…。そんな
自分が温かい家庭を築ける自信なんてないし、バックグラウンドが博之とは何から何まで違う。そう自覚したら、涙が止まりませんでした」
そして、和美さんは心配する博之さんの手を振りほどいて、走って帰ってしまいました。
「その後、話し合った結果、別れることになりました。博之には私よりもふさわしい女性が絶対にいる、と思い込んでいました。もちろん、育ってきた環境の違いが別れの直接の原因ではなくて、私が未熟で、自信がなかったからこその結果だったのだろうなと思います」
和美さんは、数年前に結婚。お子さんもいて、今ではとても幸せだそうです。
「もし、
あのとき博之の手を離してなかったら。もし、もっと自分に自信があったのなら。いまだにそんなことを考えてしまうこともあります。でも、博之との悲しい別れがあったからこそ、今の幸せがあるとも思うんです」
和美さんは、聞いているこちらがせつない気持ちになる言い方で話を終えました。「もし、あのときこうしていたら」…。そんな後悔を乗り越えることができた結果、人は自分なりの幸せの形を見つけられるものなのかもしれませんね。
<文/女子SPA!編集部>
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