ガンと闘ってきた愛犬に迫る最期。寝ているだけで不安になる|ペットロス Vol.27
ケフィの人生だけが先へと進んでしまっていた
もう自分で寝返りが打てないし、水も飲めません。飲み込みも難しくなって、口へと運んだ水で「あわや溺れるか!」となったこともありました。水分補給がままならず、12月29日にはおしっこが出なくなって再び夜間救急へ。検査で膀胱炎と分かりました。
ついこの前まではうんちが出るかでないか、下痢をしてるかどうかに一喜一憂していましたが、今度はおしっこがちゃんと出るかどうか、すぐにおむつを替えて拭いてあげられるかどうかに神経をとがらせました。
食べ物はほとんど受けつけないので、ペースト状の栄養補助剤を口のなかに塗ったり、流動食を注入器で流し込みました。それも飲み込むより口の端から流れ出るほうが多いくらいです。
かつてのケフィなら“ひと舐め”で空になっただろう小さな流動食の缶に書かれた「1日に与える量の目安」を見て、私は何度も泣きたくなりました。ケフィの体重では1日に20缶も飲ませなければなりません。それは果てしない作業でした。
「先週はこうじゃなかった」「昨日はもっと違ったのに」ということが次々と起きて、私はまったくついて行けずにいました。
私よりうんと後に生まれて、ずっと子どものように思ってきたケフィが、老いて、私を置いて逝こうとしている……。その現実を目の前に、私の気持ちの整理が着かないままケフィの人生だけが先へ先へと進んでしまっていました。
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<文/木附千晶>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】木附千晶
臨床心理士。「CAFIC(ケフィック) 子ども・おとな・家族の総合相談 池袋カウンセリングルーム」主宰。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など。著書に『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』、『いつかくるペットの死にどう向き合うか』など。
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