「崖までは1本道で、突き当たりの交差点で県道か国道かは忘れましたがそこを曲がってホテルに戻るという道順でした。けど、交差点から少ししたあたりで車を運転していた男子が『後ろの車ってさっきのベンツじゃない?』って言い出したんです。
このときは同じ車だったとしてもふーんって程度で、特に気にはしていませんでした」
ところが、途中に交差点がいくつもあったのにベンツは由貴さんたちが乗る車の後を付けてきたそうです。
「別に煽ってくるわけではなく、十分な車間距離を取っていました。ただ、いつまでも後ろを付いてくるからなんかヘンだよなって言い始めたんです。
そしたら運転手と別の男子が『あのベンツのナンバーってキリ番だけど、まさかヤ○ザじゃないよな……』ってボソっとつぶやいたんです。そんなことを言われると、もうそれにしか見えないじゃないですか。それからはみんなビビっちゃって、私も手がブルブル震えていました」

すると、ここで運転手の男子が「警察署に向かって様子を見よう」と提案します。
「当時、その車にはカーナビがついてなかったので、別の男子が地図を見ながらナビしていたんですけど、その途中でベンツは右折してどっかに行っちゃったんです。
その後は何事もなくホテルに戻れましたが、後ろから付けられている間は本当にあせりました。今はあれはただのカン違い、思い込みだったと言い聞かせていますけどね(笑)」
単なる偶然でもこんなコワモテ臭ただよう車に長時間後ろを付けられるのはカンベンしたいもの。あおられなくても確かに怖そうです。
―シリーズ「
怪談・ゾッとする話/不思議な話」―
<文/トシタカマサ イラスト/真船佳奈>
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。