スー:ふわふわのワンピースとか着て、
「素敵な女の子ってこういうことでしょ」みたいなことを35歳にもなって手探りでやっていたわけですよ。だけど、そもそも自分の内側から湧き上がる欲望ではないから失敗ばかり。相手にギョッとされることの連発で、毎日、ビクビクして。
中野:つらいね……。
スー:でも、当時の私はうっとりしていたんですよ、やれていることに。無理難題をひとつずつクリアしているような気持ちだから。でも、当時の自分の写真をみると、マジで気持ち悪いんですよ。顔つきも、髪型も違って、友達が「キモい!」って言うくらい。
やれることなら一生懸命やる!って頑張ってきたけれど、気づいたんですね、「意味なーし!」って。
「意味なーし!」って気付いたのが35歳ぐらい、「撤収!」ってなったのが37歳ぐらいかな。
彼に合わせようと無理したら、デートに遅刻するようになった
中野:ぁああ。なんか、いろんなことを思い出してしまった。私ももう少し若い頃ですが、条件は申し分なく就職先も超一流という男性とおつきあいしていたことがありました。そのときはいいと思っていて、彼に合わせようと頑張るんだけど……だんだん、つきあい続けたい自分と嫌になっていく自分とが乖離(かいり)していくんです。
会いたくてデートの約束をしたのに、待ち合わせの時刻に遅れるようになって。
スー:うわぁ、まるで
五月病の新入社員!
中野:もーうね! なんか意図的に遅れるんじゃないの。行けないの、もう。
スー:精神的負荷が強すぎたんだね。
中野:私、ダメなんだって思った。それで別れちゃったんですけどね。あとあと人からいろいろ聞いて、別れたことは間違いではなく、彼を選ばなかったからいまがあるとも思うんですけど。
スー:自分にとって心地よいかわからないのに、
「これが世間の正解なんだろう」と、なかば当てずっぽうでトライするのって、キツいんですよね。恋愛なら、なにより相手に失礼だし。そういう思い込みがなくなって、いまは本当に楽。もちろん、人間としては課題も問題もあるので、そこは向き合わないといけないんですけど。
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次回、女性と結婚にまつわるよくある「モヤり」から脱出する術については、近日公開です。
ジェーン・スー氏(左)、中野信子氏(右)
【ジェーン・スー】
1973年、東京生まれ。作詞家・コラムニスト・ラジオパーソナリティ(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』など)。著書に第31回講談社エッセイ賞を受賞の『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)や、『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ文庫)、『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)など多数。
【中野信子】
1975年、東京生まれ。脳科学者・医学博士・認知科学者。東京大学工学部を卒業後、東京大学大学院医学系博士課程を修了。2008年からフランス国立研究所に博士研究員として2年間勤務した後、帰国。現在は、東日本国際大学教授。著書に『脳内麻薬』(幻冬舎新書)『サイコパス』(文春新書)、『キレる!』(小学館新書)など。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。
<文/鈴木靖子、写真/渡辺秀之>