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「ポケベルが鳴らなくて」「ブルった」ポケベル全盛期だった90年代

 かつて一時代を築いた通信ツールである、ポケットベル。遂に、いえとうとう9月30日にサービスが完全終了の運びとなりました。秋葉原で行われた「みんなのポケベル葬」では、約300人がその功績を偲んで手を合わせたとか。ポケベル全盛期にジャストで女子高生だった筆者にとっても、非常に感慨深い出来事です。
ポケベル

写真はイメージです(以下同じ)

ポケベルとは……

 日本でポケベルは、1968年に日本電信電話公社(現NTT)がサービスを開始させました。最初は、呼び出しを受信したら、近くの電話から連絡しなければならなかったポケベル。会社からの呼び出しにドキドキしながら、最寄りの公衆電話へ向かった人も多かったことでしょう。  そんなポケベルも次第に進化を遂げ、数桁の数字がやりとりができるようになってからは、暗号のような語呂合わせが流行しました。「みんなのポケベル葬」の遺影にも「1141064(愛してるよ)」と表示されていましたね。  半世紀という長い歴史に幕を閉じたポケベル。「ポケベルが鳴らなくて」というタイトルの名曲&ドラマや「ブルった」などCMでの名台詞も生まれ、90年代を代表するムーブメントと言っても過言ではありません。そこには青春時代の甘酸っぱい思い出がいっぱい。そんなわけで、今回は筆者と同世代のアラフォー女性たちに「ポケベルにまつわる思い出」を緊急取材。今のスマホ全盛では考えられないエピソードの数々……懐かしむか斬新に感じるかは、世代次第でしょうが。

忌まわしき黒電話

 現在40歳のF田さんは、高校2年生の時に初めてポケベルを手にしたそう。周りの友達に比べるとだいぶ遅めのデビューで、「必要ない」と言い張る親をどうにか説得した結果とのことです。  というのも、F田さんの自宅にあった固定電話はプッシュ式ではなく、当時でも既に遺物と化していたダイヤル式の黒電話。つまり自宅でメッセージを受信しても、すぐに返答することが出来ず、その度に徒歩数分のところにある電話ボックスに駆け込んでいたわけです。  しかし、自宅が未だに黒電話であることが恥ずかしくて友達に言えずにいたため「F田はベルの返しが遅い」と非難されることもしばしば。ようやく自宅にプッシュ式の電話が導入された頃には、すでにPHSが台頭し始めており、F田さんは華のポケベル全盛期を満喫出来なかったことを今でも悔やしく思い出すとか……。

ベル友から始まり20年。FacebookやInstagramでも

 高校2年生の時から大学入学あたりまでポケベルを愛用していたという、現在41歳のM橋さん。彼女には今でいうSNS友達のような、ポケットベルだけで連絡を取り合う「ベル友」が何人かいたそうです。残念ながら殆どのベル友とは長続きせずに自然消滅していったそうですが、唯一ポケベルを解約するまで細々と連絡が続いていた男性が一人いたとか。  ポケベルを解約する前に、新しく取得した携帯の電話番号を送っておいたところ、今度はそっちで連絡を取り合うように。その後はベル友ならぬ電話友として再び細々と続き、メル友へと移行。mixiが流行るとそちらでも繋がり、現在はFacebookやインスタグラムでたまにやりとりをしているとか。特に恋が芽生えることは無かったようですが、20年以上も続く不思議な縁なので切るつもりは無いそうです。

ポケベル・ストーカーだったけど……

 ポケベルはメッセージの最後に名前を名乗らなければ、誰が送ってきたのかわかりませんでした。 ポケベル 女子高生 現在39歳のT中さんは、高校1年生の時からポケベルを使い始めたそうですが、使用を開始した直後に「スキデス」というメッセージが届いたのを皮切りに、誰からかわからないメッセージが大量に送られてくるようになったとか。 「キョウモカワイイ」「カミガタニアウ」「キレイ」など、殆どが彼女を誉め称えるものだったそうですが、ごく平凡なルックスを自覚していた彼女は、そんなことを言われるいわれはない、誰かしらからの嫌がらせだと無視し続けたそうです。  しかしそのほめ殺し攻撃は延々と続き、T中さんも受信がもはや日課になっていた頃、同じクラスの男子から突然の告白を受けました。よくよく聞いてみると、その彼こそがあのポケベルメッセージの主。告白のつもりが名前を名乗り忘れ、そのまま引っ込みがつかなくなったというオチ。2人はお付き合いをスタートさせたそうです。  もちろんその後は名前のないメッセージが届くことはなくなりましたが、それはそれで寂しい気持ちになったとT中さんは語っていました。  今思えば少し便利だけど、実際は不便。でも今のような通信手段の無かった時代には、何よりも重宝されていたポケベル。筆者も含め、青春時代をポケベルと共に過ごした人たちの中では、いつまでも甘酸っぱい思い出の一環として生き続けることでしょう。  2018年時点での「スマートフォン」の保有者の割合は64.7%、「携帯電話・PHS」は26.3%でここ数年大きな変化はありません(n=42,744、総務省・令和元年版情報通信白書より)。しかし、1995年にサービスが開始されたPHSも、2020年7月末をもってサービスが終了されるなど、今後私たちの通信機器はどのように変わっていくのでしょうか。 <文/もちづき千代子> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
もちづき千代子
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:@kyan__tama
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