なるほど。作品は手編みなんですか? とても精巧なので時間も手間もかかりそうだなと思って…。
デヴィッド・ボウイのセーター
「橋本先生の作品は全て手編みだったので、
私も最初は手編みだったんですけど、1着編むのに1カ月以上時間がかかるので、これはもうちょっと効率よくできないかと思って、家庭用の編み機を購入しました。ところがこれ、Youtubeにもハウツー動画がない、ググっても機械編みのハウツーはヒットしない、編み機自体にも取扱説明書がついていない。
途方に暮れて、買った店に行って相談したら、編み機を教えているカルチャースクールを教えてもらいました。そこに週1~2回、半年くらい通って編み機の使い方を習ったんです。かつてはたくさんのメーカーが販売してましたが、現在は1社のみとなってしまったんですよ」
えぇっ、取扱説明書もついてないってすごいですね。編み機の使い方をマスターしてからは、1着編むのにかかる時間はどれくらいになりましたか?
「最初にパソコンで絵柄をデザインにして、それをさらに製図にするためにドット絵にします。ひとマスひとマスずつ色を置いていく感じの作業です。製図ができたら、それを元に編み始めますが、
編み機を使っても絵柄編みの部分は、一段一段、編み機の針に糸を掛けていく手作業なのでとても時間がかかります。絵柄が複雑な分、最後の糸始末だけでも丸一日かかりますね。製図から編み上がりまで、
だいたい2週間くらいかかります」
本業はグラフィックデザイナーとのことですが、いつからセーターを編み始めたんですか?
手編みの三億円事件セーター
「手編みを始めたのは5~6年前、機械編みはその1~2年後ですね。最初はウケを狙うつもりで、面白いモチーフを選んでいました。三億円事件、横山やすしがそうです。一方で大好きな人たちも編みました。ブルースリー、クラフトワークあたりです。ここまでは手編みでした。
作品を作り続けているうちにオーダーメイドの注文も増えて、今は仕事の半分以上を占めています。ベアブリックを販売してるメディコム・トイさんと一緒に、KNIT GANG COUNCIL(ニットガングカウンシル)というニットブランドをつくって、アイテムを販売しています」
映画「シャイニング」や、デビルマンなどの有名作品とコラボしているんですね。 ありがとうございました。
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昔は、多くの家庭に編み機があり、ジャッジャッとニットを編んでいたものです。「ファストファッションなどない時代、子どものセーターなら、編んだ方が安価でよいものができたのでしょう」という堀ノ内さん。
筆者が学生の頃は、好きな男の子にセーターやマフラーを編むのが流行って、クリスマスやバレンタイン前には短大の学食で、大量の学生が編み物をしていました。筆者も、ものっすごいヨレヨレのセーターを編んであげたことがあります。黒歴史です。
編み機もかつてほど使っている人が多くない今、編み物☆堀ノ内さんの活動は、古きよき文化を継承し、ニット人口を呼び戻す刺激になるのかもしれませんね。
【編み物☆堀ノ内さん プロフィール】
神奈川県相模原市生まれ。桑沢デザイン研究所卒業
ホームページ Twitter:
@Amimono_Hori
メディコム・トイとのニットブランドKNIT GANG COUNCILから「シャイニング」「時計じかけのオレンジ」等のセーターやマフラーを販売中
<文/和久井香菜子>
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