ペットロス・セミナーでは、悲しみも後悔も含めたペットへの思いを自由に話してもらいました。もちろん、話したくない人は話さず、聴いているだけの方もいました。静かに涙する人の時間をみんなで共有したときもありました。
写真はイメージです
なかには、もう何年もその悲しみにとらわれている人もいました。そういう方の多くは看取りの課程で大きな後悔を抱えていました。
「獣医さんの言うとおりにしたのが間違いだったのではないか」
「もっと早く病気に気づいてあげればよかった」
「息を引き取ったとき、そばにいてあげられなかった」
同じ体験をし、ペットがもたらしてくれる幸福を知っている人たちとの分かち合いは、後悔も軽くしてくれます。ひとりで抱え込んでしまい、忘れようとすればするほど、後悔は大きくなります。
悔いがあるならば、その思いを言葉や形にし、できるだけだれかと共有することをお勧めします。
そして今、まさにペットとの闘病生活を送っている人、看取りのまっただ中にいる人は、目の前で起きていることを見つめてください。
私たちは辛い現実から目を背け、
「こうあって欲しい願望」を信じ込もうとしがちです。私もそうでした。でも、それでは困難や辛いことを予想して、それを受け止めるための「覚悟」ができません。
少しずつ消えていこうとする命を見つめ、小さな喪失体験を積み重ね、正解のない闘病や介護に悩みながらも向き合う。――そうやって
死の恐怖に向かって、愛する者と共に苦しむことが、「覚悟」をともなう看取りにつながる気がします。「覚悟」ができなければ、たくさんの後悔を残してしまうことになります。
「人は否認するものだ」とわかっているだけでも、きっと「覚悟」に一歩近づくことができるはずです。
2017年1月に愛犬の「ケフィ」が亡くなり、当連載を始めたのが2017年4月。カウンセラーという仕事柄、ペットロスについてはよくわかっていましたが、それでも喪失感は想像以上でした。気持ちがようやく落ち着いた2019年9月まで計29回にわたって、自分の経験をふまえて「いつか来るその日」とどう向き合ったかをお伝えしてきました。
新しく家族になったゴールデン・レトリーバーのケノン
ケフィが亡くなってもうすぐ3年。新しい子を迎えたい気持ちと、ケフィのことを「過去」にしたくない気持ちがせめぎ合っていましたが、ようやく決心をし、2019年秋、ゴールデン・レトリーバーの「ケノン」を家族に迎えました。
●木附千晶著
『いつかくるペットの死にどう向き合うか』
本連載に加え、悲しみから立ち直る心のプロセスや、覚悟のきめかた、新しい子を迎えたことによる心境の変化などをつづった電子書籍『いつかくるペットの死にどう向き合うか』(12月13日発売)
=====================
<文/木附千晶>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】