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アパレルの福袋を買ってはいけない。中身を隠す理由とは…/バイヤーMB

 ファッションバイヤーのMBです。  年末年始に、多くのショップが福袋を売り出します。  ですが、アパレルの福袋は基本的に買ってはいけません。 福袋 いや、買いたくなる気持ちも分かるし、私自身も気の迷いで買ってしまうこともあります(笑)。でも裏側を考えると「福袋に良いモノが入ってる確率」は極めて低いのです。

中身不明の福袋は、在庫処分にすぎない

 そもそもアパレルショップは在庫をさばくことが何より大事です。「消化率(シーズン内でどの程度在庫がさばけたかの指標)」なんて言葉で考えますが、企業によっては単純な売上高よりもこの消化率を重要視するところもあるくらい。  それはなぜか。ブランドやショップは在庫が積み上がっていき倒産・撤退することが多いからです。売れ残りの在庫は来年に出しても再来年に出しても売れないもの。何しろ洋服は1年型落ちすれば90%OFFにもなる「セール」という慣習があります。在庫は残れば残るほど原価を切っても売れない漬物石となる、これがアパレルブランド最大の懸念事項なのです。
服在庫 

画像はイメージです(以下同)

 しかも在庫は資産ですから税金もかかるし保管の手間もかかる。さらには経理上は資産ですからつまり「お金」とほぼ同義です。動かないお金が倉庫にどんどん溜まっていけば、当然、使える現金資産は目減りしていく。在庫が積み上がったせいで現金資産がなくなり仕入れができなくなる、なんて割とよくある話。だからこそブランドやショップはとにかく在庫を減らしたいと考えるもの。  そこで便利なのが「福袋」です。型落ち品だろうが関係なくさばくことができる超効率の良い手法が福袋、何しろ中身が見えないのですから。多くのショップやアパレルは、漬物石と化した型落ち品をここで放出しようと毎年大活用するわけですね。

中身を隠すのは、良いモノを入れないから

「いや宣伝になるから良いモノ入れるでしょ?」  と思うかもしれませんが、それは残念ながら消費者の幻想でしかありません。  そもそも宣伝になるなら、なぜ中身を隠すのですか?? 宣伝になるほど魅力的なものが入っているのなら、「こんな凄いものが入ってます!」って中身を見せた方がよほどプロモーションになるでしょう? そっちの方が買わない人にも宣伝できるのだから。  もし中身を隠して良いモノを格安で売ってるのだとしたら、手にとった1人にしか宣伝できないじゃないですか。「中身を隠す」理由はたった一つなんです、それは「見られちゃ都合が悪いから」。論理的に考えればそれしかありません。  ついでに言えば、上述の通り宣伝のために「中身を見せて販売する福袋」も確かにあります。109系のショップなどではよくやりますが「必ずコレかコレかコレが入ってます!」といった宣伝手法で福袋を販売します。お得感がある商材ならこうしたことを当たり前のようにするわけです。「全部隠す」のはそれは都合が悪いからなのですね。
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