A先輩はいつも誰かに囲まれていて、華やかで美人の特権だなと思っていたけれど、そうではありませんでした。
今思えば、「
すぐにゲートに行かなきゃいけないのに……」「
仕事が終わらなくてまだ帰れないの……」と仕事がはかどらずにいるA先輩を何度も見ていた。それからほどなくして、A先輩は退職。
思うように仕事をこなせなくて悩んでいたと他の先輩から聞かされたとき、「あぁ、私って表面的なところしか見えていなかったな」と猛省しました。「男性客に囲まれて仕事が進みません」だなんて、誰かに相談することもできなかっただろうなって。いや、嫌味とかじゃなくて本当にそうだったから。
現に、「
Aさんのチェックイン、時間かかり過ぎ」「
ゲートに来るのも遅いよね」とか、「
顔採用もいいところ」なんて悪口をロッカーで耳にしたこともあります。上司からも、接客がメインではない部署へ移動を持ちかけられていたみたい。聞いたときは悲しかったし、もっと力になりたかったと思いました。
退職理由が他にもあったとしても、美人過ぎるあまりに計り知れないストレスを抱えていたのかもしれませんね。
あれから十数年以上経つけれど、A先輩の美しさは今も私のまぶたの裏に焼き付いています。
<文/高木沙織>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】高木沙織
「美」と「健康」を手に入れるためのインナーケア・アウターケアとして、食と運動の両方からのアプローチを得意とする。食では、発酵食品ソムリエやスーパーフードエキスパート、雑穀マイスターなどの資格を有し、運動では、骨盤ヨガ、産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、Core Power Yoga CPY®といった資格のもと執筆活動やさまざまなイベントクラスを担当。2021年からは、WEB小説の執筆も開始。Instagram:
@saori_takagi