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『スカーレット』離婚劇の波紋。歴代朝ドラは離婚・不倫をどう描いてきたか

『スカーレット』の先駆けともいえる離婚劇、『ふたりっ子』

 また、離婚したヒロインでまず思い出すのは、『ふたりっ子』(1996年下半期)の棋士・香子(岩崎ひろみ)です。  香子がプロを目指すきっかけは、感じの悪いインテリ学生・森山史郎(内野聖陽)に負けたこと。しかし、後に奨励会で兄弟子となる彼に再会。徐々に恋心が芽生え、やがて結婚します。
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 ですが、妊娠・流産を経験し、そのショックから将棋を捨てて専業主婦になろうとする香子の姿を見ていられなくなった史郎は別居を決め、初心を思い出した香子は将棋に専念するために自ら離婚を申し出ます。  将棋によって結びついた二人ですが、別れさせたきっかけも、やはり将棋でした。離婚した2人は、タイトル争いで対決→再びプロポーズ&失敗→別々に暮らすほうが良いという結論に至ります。  結婚も離婚も、全てはヒロインの才能を開花させ、本当に大事なもの=将棋を再確認させるためのもの。才能&情熱と家庭が両立しなかった例として、『スカーレット』の先駆けといえるでしょう。

朝ドラ初の不倫、名作『カーネーション』の衝撃

 ちなみに、朝ドラで不倫を初めて描いたのは『カーネーション』(2011年下半期)でしたが、綾野剛演じる不倫相手・周防さん(既婚の紳士服職人)が大人気を得た一方で、「朝ドラで不倫を描くこと」に対する批判も多数ありました。  しかし、ヒロイン(尾野真千子)の恋が熱く美しく描く一方で、ヒロインに向けられる周囲の冷ややかな目や、批判される母をかばう子どもたちの健気さも同時に描くことで、ヒロインの初恋であり「道ならぬ恋」の美しさとグロテスクさが際立っていました。
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『カーネーション』自体は非常に人気のある作品ですが、多数の批判もあった「不倫を描いた」ことの衝撃は、後の朝ドラに大きな影響を与え、以来、朝ドラ視聴者は「不倫が描かれるんじゃないか」と恐れて、ちょっと色っぽいシーンで「不倫フラグ」を警戒するようになっている印象があります。  そのため、イケメン複数制が主流になっている近年の朝ドラでは、『あさが来た』(2015年下半期)で弱り切った五代様(ディーン・フジオカ)が、たったひととき、あさ(波瑠)を抱きしめるシーンがある程度。しかも「信頼関係」が土台にある寸止めで描くのが好まれています。 <文/田幸和歌子> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
田幸和歌子
ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など。Twitter:@takowakatendon
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