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ニューヨークの救命医師から悲痛な声「水を飲むためにマスクを外すのも恐ろしい」

 中国やイタリアを抜き、新型コロナウイルス感染者数で世界第1位となってしまったアメリカ。中でも人口が密集するニューヨーク市の感染者数は約5万2千人と目立って多いといいます。
 そんな中、ニューヨーク市在住の医師が3月24日に投稿した一連のツイートが話題に。そこには、新型コロナウイルスの恐ろしさと、過酷な医療現場の様子が淡々と記録されていました。

エボラ治療に従事経験もある医師の悲痛なツイッター「家にいて!」

『ザ・ワシントン・ポスト The Washington Post』も注目したツイートの主は、コロンビア大学メディカルセンター緊急救命病棟に務める医師、クレイグ・スペンサーさん。 「ER(救命救急病棟)医師の一日~新型コロナウイルス治療の最前線で」と題して投稿された連続ツイートで、朝6時半に起床し、マンハッタンを歩いて病棟に向かい、混乱の中で治療にあたった後、家に帰ってシャワーを浴びるまでの1日を紹介しました。  そこに綴られていたのは、呼吸が荒く、高熱にうなされ、嘔吐する重篤な患者たちの病状や、救急車のサイレンが途切れることなく次々と感染者が運び込まれ、ほぼ満室の病棟で休む暇なく患者の手当にあたる医師たちの様子。  過去に西アフリカでエボラ出血熱の治療に従事したこともあるスペンサー医師にとっても、 「院内では水分補給のためにマスクを外すのも恐ろしい」 「帰宅前にスマホや財布、医師バッジなどの持ち物を何度も消毒しないと不安」 だとする内容は、これ以上ないほどリアルなツイートになっています。  また、ツイートの結びでは、今人々が取るべき行動を切実に訴えかけ、多くの人の共感を得ています。 「ウイルスは会ったこともない人から感染したりしない。だから、外出しないでほしい。人混みを避けることだけが唯一私たちを救う。  経済なんて人の命に比べたらちっぽけなもの。フェイクニュースだって思っている人もいるかもしれないが、これが現実。そんなに深刻な問題じゃないと聞いているかもしれないが、深刻だ。  家にいて、安全に過ごしてください。私たちは毎日、あなた方のために仕事をしますから」

人気トーク番組が制作ストップ、キャスターが在宅で放映の情報番組も

 前述のスペンサー医師はツイッターで、感染防止のため自身の子供と何日も顔を合わせておらず、帰宅の際にはマンションの廊下ですべての服を脱いで紙袋に入れてから自宅に入るよう徹底していると綴っていました。それほどに、新型コロナの感染力は強いのだということを物語っています。  各地で外出禁止令が出されているアメリカでは、現在、ほとんどの市民が要請を素直に聞いて自宅に閉じこもっています。筆者の友人たちは一様に、食材の買い出し以外では外出しておらず、そのために「夫婦喧嘩が絶えない」と冗談とも本気とも取れる不満を漏らしています。  自由なマインドを持つ米国人たちが、こんなに素直に家にこもっていられるのは、 多くの都市でデパートや映画館などが長期閉店し、学校もオンラインクラスに移行、レストランやバーなど飲食店はテイクアウトやデリバリー以外の営業を一切していないため。「外に行きたくても、行くところがないから」というのが一番の決め手でしょう。  加えて、『エレン・デジェネレス・ショー』などの人気トーク番組が期限付きで制作自体をストップしたのをはじめ、『ライブ・ウィズ・ケリー&ライアン』のケリー・リッパとライアン・シークレットやNBCの朝の情報番組『トゥデイToday 』のキャスターたちが在宅で放送に参加して見せたことも、視聴者にインパクトを与えるのに十分な効果があったと思います。
 アメリカのスーパーマーケットでは欧州と同様、20名ずつ入場させるなど制限を設け、外で待っている客たちも2~3メートルの間隔を空けて並んでいると聞きます。これは買い占めなどによる混乱を回避するのはもちろん、人混みによる感染を防ぐのが目的。  とにかく今は人との至近距離での接触を避けておとなしく過ごすことが一番。不要不急の外出を避けて過ごしましょう。 Sources:「The Washington Post」 クレイグ・スペンサー医師(@Craig_A_Spencer)のTwitter投稿 <文/橘エコ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
橘エコ
アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。
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