「“当たり前”を変えないと変化は生まれない」働くすべての人に贈りたい考え方とは
「生産性を上げろ」「数字を出せ」
経済が停滞する中で、そんなプレッシャーが日に日に強まっています。かつては経済大国と言われた日本も、いまや職場の「生産性」「働きがい」「賃金」などの水準は、先進諸国で下から数えた方が早いほどにまで急落しています。
しかし、それは私たち働き手の責任なのでしょうか? 好景気時代を過ごしてきた職場の50代・60代を見回しても、私たちより何倍も優秀な人ばかりとは思えないけれど……。
そんな疑問に、これまで400以上の企業・行政機関に携わってきたワークスタイル&組織開発専門家の沢渡あまね氏は、「生産性も働きがいも、仕事は職場が9割」と言います。むやみに自分を責めたりネガティブになる必要はまったくないそうです。今回は沢渡氏の著書『仕事は職場が9割』から、一部抜粋・編集してご紹介します。
ふと職場を見渡してみると、私たちは膨大な「当たり前」に囲まれています。
「上司の言うことは絶対」
「お客様のわがままを聞くのは当たり前」
「みんな我慢して当たり前」
同じ職場で変わらぬメンバーと働くうちに、旧態依然とした慣習や価値観に、いつの間にか染まっている自分がいる。職場をより良く変えようと意気込んでも、変化を拒む同調圧力に押し潰されて、結局、振り出しに戻ってしまう。気づけば惰性で仕事をこなし、鏡に映る顔からは覇気がなくなっていく。そして、今日も淡々と仕事をこなす一日が始まる――。
無理もありません。
今、テレワーク、複業、DXなど、新しい仕事のやり方や考え方が次々と生まれています。ビジネスモデルも、時代に合わせて刻一刻と変化しています。それなのに、昔から続く仕事のやり方は変わらない。これでは、新たな気づきや学びを得て成長するのは難しく、ましてやイノベーションを起こせなんて無茶ぶりもいいところです。
「生産性を上げろ」「数字を上げろ」
そう言われても、すべての活動の源泉が生まれるのは職場。その環境や働き方をそのままに、個人の努力や才能に依存しているだけではイノベーションなど期待できません。
私はワークスタイル・組織開発の専門家として、これまで400以上の企業・自治体・官公庁と向き合い、そこで働く人々の生の声を聞いてきました。そこには冒頭のような、悲壮感に満ちた声が溢れています。
たとえば、職場にまん延する無意味な同調圧力として、「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」なる言葉をご存じでしょうか。男性中心の組織が作り上げてきた独特の仕事の進め方や人間関係を指す言葉です。
飲み会、喫煙所での雑談、ゴルフ仲間同士の会話等々。こうした男性中心のネットワークで仕事の方針や重要事項が決まったり、人間関係が構築されていき、女性の活躍を阻む要因として指摘されています。
かく言う私もOBNの存在が若手の頃から大の苦手でした。なぜ、仕事が溜まっているのに無理に飲み会に参加したり、興味のないゴルフを始めたりしなければいけないのか? 就業後や休日はしっかり体を休めた方が、仕事のパフォーマンスは上がるはずなのに……。



