NHK『大奥』、風間俊介演じる“種なし”が見せてくれた「最も理想的な死」
徳川吉宗の逝去とともに、NHKドラマ10、男女逆転『大奥』の第1シーズンが幕を閉じた。現代の渋谷スクランブル交差点に立つ冨永愛(転生した吉宗?)の姿が映し出されるという展開に、心底驚かされた。そして本作が、現代へ向けられた多いなる序章というべきメッセージであると強く思わされた最終回であり、同時に、原作ファンも納得の平賀源内役の鈴木杏や、青沼役の村雨辰剛の顔見せを含め、第2シーズンへの期待を大いに抱かせるものとなった。
村瀬(石橋蓮司)の死と同時に行方の分からなくなっていた没日録を受け取った吉宗は、そこで、紀州藩主の三女だった自分が、いかにして八代将軍に成り得たかの真相を知る(ラストの貫地谷しほりは本当に素晴らしかった)。
よしながふみによる傑作漫画『大奥』は、なによりその大胆な設定により、ファンタジーとしての要素が頭に入ってくるが、その実、非常にリアルな問題を突き付けてくる骨太な人間ドラマだ。しかも史実をなぞりながら。そのことは、原作ファンはもとより、本ドラマを見てきたファンならば十二分に感じてきたはず。
本ドラマ化は、岡本幸江プロデューサーがコメントしている通り、16年の歳月をかけて叶った念願の企画。長い年月がかかったが、むしろそのことにより、全19巻にわたる原作の完結を経て、この時代にこそ実現すべき運命だったと強く思わされる作品になった。
舞台は、赤面疱瘡なる流行り病により、男子の人口が女子の1/4にまで減少した江戸時代の日本国。いわゆる単純なジェンダー論に留まらず、“生殖”が他人の手に握られることの暴力性を、これでもかと浮き上がらせてみせた。しかも、「大奥」という鳥かごと言うべき場所で、家光(堀田真由)、綱吉(仲里依紗)ら悲しき個人の孤独にフォーカスしながら深い愛を描いて、私たち自身の持つ孤独へと共鳴させながら。
それを、吉宗という、加納久通(貫地谷)が、吉宗の姉たちを弑(しい)ても将軍にすべきと懸けた大きな人物を柱に、問題に取り組む姿を示していった。オリジナルを大胆に組み込んで構成した森下佳子の脚本には、拍手しかない。
くしくも新型コロナの経験と重なったために、流行り病のもとにおかれたことへの現実社会との共通点が浮かびがちだが、赤面疱瘡が差しているのはもっと奥にある病。少子化という問題を、なんとか国がコントロールしようとして瀕している今現在の状態に重なって見えてくるのである。
今の時代にこそ必要なドラマだった
“生殖”が他人の手に握られることの暴力性を描いた
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