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震災の話、福島の被災者の前では逸らしがち。それって正しいの?『姪のメイ』もっと評価されるべき理由をセリフから紐解く

姪のメイ

『姪のメイ』出展:PR TIMES(公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構)

人とともに生きるということ、そして愛について。 言葉にすると少々恥ずかしさを感じてしまうこれらのことを、温かな視点で描いたドラマがある。10月12日に惜しまれつつ最終回を迎えた『姪のメイ』(テレビ東京)だ。 本稿では、印象的だった言葉をピックアップする形で、作品を振り返りたい。

仮住まいで始まった姪との同居生活

本作は小学6年生のメイ(大沢一菜)が事故で両親を亡くすところから物語がはじまる。紆余曲折、というよりは半ば押し付けられるような格好で、メイの母親の弟、つまりメイにとっては叔父にあたる小津(本郷奏多)との期間限定の同居生活が始まった。『姪のメイ』は、叔父と姪が仮住まいのために訪れた福島で繰り広げられる物語だ。 作品の魅力は、生前(そして死後にも)父が語った哲学的な言葉によって小学生とは思えぬ達観した考えを持つメイと小津、そして福島で暮らす人々との交流だ。そこには様々な温かい言葉がそっと添えられていた。

「悲しんだ数と同じ数の笑顔が必要」

物語の舞台は福島県楢葉町。2011年の東日本大震災で全町非難を余儀なくされ、その後2015年9月まで立ち入りを禁止されていた区域だ。 小津とメイは楢葉町にやってきた直後、もともと福島に住んでいた人と最近移住してきた人とをつなぐコミュニティの集会に参加した。そこでは、小津とメイが福島に来た理由や、移住組が福島を住処に選んだ理由なんかをざっくばらんに語り合う。 そして、話題は3.11に。小津は、きっと多くの人がそうしてしまうように、話題を他へ移そうとした。コミュニティの主催者である平田建一(川田広樹)が、含みのある表情をしているのが印象に残る。 会がお開きになったあと、帰り際に平田が言ったのが「悲しんだ数と同じ数の笑顔が必要」という言葉だ。これまで福島はたくさん悲しんできて、いまはまた前を向いて歩き出そうとしている。だからこそ、笑顔が必要なのだ、と。 悲しい出来事が起こっても、再び歩み出す日は訪れる。いつまでも泣いてばかりではないし、周りがタブー視しすぎるのも違う。難しい問題ではあるが、人との向き合い方を考えさせられる、深い言葉だ。
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メイから教えられたこと
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