NHK『大奥』“寵愛”を受ける家定(愛希れいか)を中心にシスターフッドの香りを感じた幕末編初回
男女逆転『大奥』の最後を締めくくることになる“幕末編”が、7日に放送された第16話からスタートした。
男子の数を激減させたことで、女将軍を誕生させた伝染病の赤面疱瘡は、第11代将軍・徳川家斉(中村蒼)が推し進めた熊痘により撲滅。
しかし大奥には、バケモノ治済(仲間由紀恵)の遺伝子を継ぐバケモノ12代将軍・家慶(高嶋政伸)が残っていた。それを変えたのは、「己の翼で飛ぼう」とする阿部正弘(瀧内公美)、瀧山(古川雄大)たちだった。
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男子の数が回復したことで、男が家督を相続して仕事をし、女は子どもを産み育てる役割へと世の中が急速に変化。しかしそこについていけない者もおり、兄が家督を相続したがらなかったことで、阿部正弘(瀧内公美)は阿部家の当主となる。
決して嫌々ではなく、むしろ兄とは逆に、正弘は外に出て仕事がしたいと思っていた。役職についているのは、すでにほぼ男性、残る女性は男性に敵意むき出しかつ将軍には媚びへつらうタイプ。もとより柔らかな三日月のような瞳が印象的な正弘は、周囲に敵を作ることこそなかったが、居心地の悪さに力を発揮できていなかった。
あるとき芳町に連れていかれた正弘は、陰間の瀧山(古川雄大)と出会う。「実は学者になりたいんです。ここを出たら、今度こそ己の翼で飛びたい」とまっすぐに語り、さらに「伊勢守さまは己の翼で飛んでなさるってことでござんすね」と言われる。
せっかくチャンスが巡って自分から飛び込んだというのに……。努力を続けながらチャンスももらえぬ人がいるのに、いま自分は飛べているだろうか?とズシリと来た正弘は、気合いを入れ直し、見事、久方ぶりの女性の老中へと昇進する。
ここでのやりとりに、自分が言われているかのように感じた人もいるのではないだろうか。世の中は理不尽なことばかりで「己の翼で飛ぶ」ことは、当然たやすくない。だけど、せっかくチャンスをもらい、もしくは自分でつかみ、飛べる場にいながら、正弘と同じように停滞している人がいて、もしも、もしも自分自身で良しとしていないならば、正弘のように兜を締め直すのもいいだろう。
フィクションの世界に生きる、時代も違う登場人物たちとの出会いが、自分の人生に直接響くこともあるのも、ドラマを見る楽しみのひとつだ。
将軍職も家慶から男子へと継がるのが時代の流れというもの。だが次の将軍には娘の家定(愛希れいか)が指名されていた。挨拶に出向いた正弘は、かつて家康公の身代わりを務めた阿部家の忠義を知っていた家定に感銘を受けるが、そこから家定に事あるごとに呼ばれては、一緒にお菓子作りに精を出す日々が続くことに(史実の家定もお菓子作りが趣味だった)。
手作りの菓子をふたりでつつく姿は、さながら女子会のようで、こんなとこりにも男女逆転の妙が生きてくるのかとほほえましくなったものの、家定が執拗に女性の正弘を呼びつけるのには意味があった。
家定が次期将軍とされていることを、皆は「将軍は家定様を“寵愛”している」と言葉にしていたが、事実はそんなものではなかった。家慶は自分の娘を性的虐待し続けてきたのだ。一度迎えた家定の正室は急死。
これも家慶による毒殺だと噂されていた。すべてを理解した正弘は家定を救うために「勇ましく、知恵も働き、女に優しい」適任者として瀧山を大奥へと身請けする。さらに家慶の父・家斉の正室であった広大院(蓮佛美沙子)の助けも借りて、家定のための奥を用意して見せたのだった。
己の翼で飛びたい瀧山(古川雄大)と阿部正弘(瀧内公美)が出会う
父から“寵愛”されていた家定、その“寵愛”の意味とは……
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