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『大奥』悲恋が200年を超えついに!原作漫画家にノーベル平和賞を贈るべき理由

よしながふみには、手塚治虫文化賞のみならず、ノーベル平和賞を贈るべき。 『大奥』Season2(脚本:森下佳子 NHK総合 火曜よる22時~)の第18回、13代将軍・家定(愛希れいか)が「幸せじゃ。いま、この時がこの上もなく」と、胤篤(福士蒼汰)とへの想いを噛み締める場面を見て思った。
大奥(C)NHK

大奥(C)NHK

『大奥』こそ「大河ドラマ」という声が当初からあがっていた理由

よしながは「『大奥』は有功にはじまり有功に終わります。有功は『大奥』の象徴なんです」と「よしながふみ『大奥』を旅する」(平凡社)で語っている。 それゆえか、原作漫画では、この場面で家定は3代将軍・家光(堀田真由)からこれまでの歴史を振り返っていて、テーマがわかりやすい。ドラマでは振り返りはないものの、流水紋の裃(かみしも)を胤篤が着用しているだけで、長い時の流れの終着点がここ、だと感じる。
太陽の地図帖編集部「よしながふみ 『大奥』を旅する」平凡社

太陽の地図帖編集部「よしながふみ 『大奥』を旅する」平凡社

『大奥』こそ「大河ドラマ」という声がSeason1の頃からあがっていた理由は、流水紋が時の流れを象徴しているからなのだろう。

男女差・身分差もなく人を登用するまでの成熟に到達

『大奥』はなにも男女の逆転が画期的だという話なのではない。赤面疱瘡(あかづらほうそう)という死に至る病によって道を違えてしまった男女――あるいは人類のあり方が、200年もの時間をかけてようやく理想に行き着く、そんな壮大な物語なのだ。 赤面疱瘡によって男性が激減し、家光が初の女性将軍となったことで、男性は子種を残すための存在と化した。大奥に集められた複数の男性と子供を作ることを義務化された女性将軍たちは懊悩(おうのう)するが、女性が政治を司(つかさど)ることが当たり前になっていくと、彼女たちにも野心が芽生え、治済(仲間由紀恵)のような怪物が誕生する。
大奥(C)NHK

大奥(C)NHK

赤面疱瘡が種痘(しゅとう)で治るようになり、久しぶりの男性将軍となった11代将軍・家斉(中村蒼)は「男がおなごと同じ力をもち、男とておなごを守れるそんな世に変えたいのだ。いまのままでは男は種付しか脳のないでくのぼうに甘んじるしかない」という切実な思いを吐露した。やがて家定の代になると、身分の別なく人を取り立てる世に意識が向く。 「西洋の国々はたしかに強い。しかしどこも主たるは男。女の力は認めぬという。じつは私はここが勝ち目だと思っておるのじゃ。おなごにも力のある者は大勢おる」と、男女の差も身分の差もなく人を取り立てたら選択肢は倍になる。そうすれば西洋に負けないのではないか。ついに将軍はここまでの精神的成熟に到達した。
大奥(C)NHK

大奥(C)NHK

遡(さかのぼ)って、医療編では、男装して蘭学に励み、赤面疱瘡治療方法を発見した平賀源内(鈴木杏)が、男性の暴力でねじ伏せられ未来を失ってしまうという悲劇があった。理想はあれど、男と女にはどうしようもない体格差や身体機能の違いがある。
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SF仕立てで男女平等を実現させる物語であり壮大なラブストーリー
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