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42歳俳優の持つ狂気と、気持ち悪い歌声。映画『カラオケ行こ!』がじわじわ伸びそうな理由

『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「マンガ大好き芸人」でも紹介された和山やま氏の漫画『カラオケ行こ!』(KADOKAWA刊)。その実写映画が、1月12日から公開されている。映画の週末観客動員数ランキング(興行通信社調べ)では、12~14日は8位に、18~21日は7位にランクインするなどまずまずの滑り出し。
映画『カラオケ行こ!』

画像:映画『カラオケ行こ!』公式サイトより

 ハートフルでありながらも程よいバイオレンスさが混ざった内容で、じわじわと話題を集めそうな本作の魅力をまとめたい。 ※この記事では、映画の内容や結末についても触れています。

中3男子とヤクザの交流。“心の声”の表現に脱帽

 漫画『カラオケ行こ!』は、合唱部部長の中学3年生・岡聡実(齋藤潤・16)が主人公。ヤクザの若頭補佐・成田狂児(綾野剛・42)から歌が上手くなるための指導を依頼され、その後交流を重ねる中で徐々に心を通わせるという物語だ。映画では原作と基本的な流れは一緒ではあるものの、オリジナル要素がちょくちょく足されている。  特に印象的だった違いは、漫画では聡実の心の声が多く描かれているのに対し、映画では聡実が心の中で何かを語るシーンはないという点。心境の変化などは演技で表現されていた。
映画『カラオケ行こ!』シナリオブック

「映画『カラオケ行こ!』シナリオブック」(KADOKAWA)

 ただ聡実を演じる齋藤は、伏し目がちだったり、感情の起伏を他人に悟られないようにテンションを“ロー”にしたりなど、思春期特有の複雑な葛藤を体現していた。漫画ではセリフで描写されていた心境を演技で描写していたことは、実写映画ならではの良さと言える。とはいえ、それを目や表情筋の動きなどで表現した齋藤の演技力にはただただ脱帽するしかない。

綾野剛が持つ優しさと狂気、そして気持ち悪い歌声

“映画ならでは”で言えば、初めて狂児が聡実をカラオケに誘った時に、狂児がX JAPANの『紅』を熱唱したシーンに触れずにはいられない。  原作でも映画でも聡実からは「終始裏声が気持ち悪い」と評された狂児の歌声ではあるが、たしかに聡実の言う通り狂児の歌声は終始裏声が気持ち悪い。そのセリフを口にしたくなるような歌を披露した綾野の適応力には驚かされた。  また、狂児という役は一見常識人のような、怖すぎて近寄れないような、様々な側面を含んだキャラである。ドラマ『MIU404』(TBS系)や『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)といった作品で、幅広い役を演じてきた綾野だからこそ演じられたキャラのように思う。中盤には薬物中毒者に絡まれた聡実を助けるために鞄を振り下ろす。無慈悲さを見せながらも、どこか“優しいお兄ちゃん”を残せる、綾野という役者の懐深さを感じたシーンだった。
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“生活圏にいない大人”と交流する必要性
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