Entertainment

亀梨和也の将軍はツンデレ?フジ版『大奥』NHK男女逆転版が忘れられない中「女のバトルもの」で威信を賭けた?!

“大奥”と聞くと反射的にNHKの男女逆転版(よしながふみ原作)を思い浮かべてしまう視聴者も少なくないようだ。 男女逆転の趣向のインパクトが強く、なにより面白かったから無理はない。が、“大奥”といえば、フジテレビのお家芸(いえげい)なのである。
(画像:『大奥』フジテレビ公式サイトより)

(画像:『大奥』フジテレビ公式サイトより)

フジテレビの『大奥』は快楽重視。でもそれでいい

木曜劇場『大奥』(フジテレビ)は見事に従来の女のバトルものに原点回帰したものだった。そこに男女逆転版が築いた歴史教養知的エンタメの色はない。ひたすら刹那(せつな)的な快楽を重視したしつらえ。でもそれはそれでいい。 フジテレビの大奥をかなりざっくり説明しよう。1968年に関西テレビが東映と共同制作しフジテレビ系で放送された『大奥』を筆頭に、80年代、2000年代と『大奥』が放送されてきた。とりわけ盛り上がったのは03年版で、今回の木曜ドラマ『大奥』では、03年版で最後の大奥総取締役・瀧山を演じた浅野ゆう子がナレーションを担当している。
『大奥(2003)』(画像:FODより)

『大奥(2003)』(画像:FODより)

今回、05年の連続ドラマ『大奥~華の乱~』以来、フジテレビでは20年ぶりの連ドラ化にあたり、00年代の大奥シリーズが再放送されている。03年版を久々に見たら、あの主題曲の荘厳さに含み、濃密でパンチがあるなあと改めて感じたものである。 “大奥のフジ”の威信を賭けたかのような(?)今回の木曜劇場『大奥』。「ohoku」と英語もついて、令和版を作る気合を感じる。ふたを開けてみたら、大奥のまばゆさと、女たちの遠慮会釈のないたくましさ、人間の欲望をポップに描き出す手際はさすがのフジテレビであった。京都でたくさんロケしているところも観光ドラマ感があっていいのである。 口調が完全に現代口語で、公家の姫が「付き人なら大丈夫です」と答えるセリフがものすごく現代的。「例の付き人」もいまどきの言い回しな気がしたが、その分、親しみが持てる。

倫子がひたすらいじめられる第1話

時代は、江戸中期。栄華を極めた江戸の町が経済的に逼迫(ひっぱく)し倹約に迫られていた。不満を抱いた民衆たちの一揆が増発し、幕府は頭を痛めている。そんなとき第9代将軍・徳川家重(高橋克典)が急死し、家治(亀梨和也)が第10代将軍となった。京都から嫁いできた公家の姫・五十宮倫子(小芝風花)は御台所として大奥に入るが、そこは女の出世欲と嫉妬がとぐろを巻き、倫子は蹴落としにかかられる。
いじわるの中心は大奥総取締役・松島の局(栗山千明)と側室候補の千保(森川葵)。松島には高岳(田中道子)というライバルがいて、いがみ合っているが、松島が田沼意次(安田顕)と組んで完全リードしているところ。 松島は千保に倫子のことを「生きる気力をなくすようかわいがってやれ」と命じる。こうして第1話はひたすら倫子がいじめられ続けた。東山天皇の皇子・閑院宮直仁親王の娘で皇室の血を引く倫子はあれよあれよという間に、京都からもってきた道具を処分され、唯一信頼できる付き人・お品(西野七瀬)は監禁されて、千保にへんな髪型と着物にされて恥をかかされる。
家治は、祖父・吉宗が倹約家であったことから自身も質素を求め、派手な女たちを暇に出す。この流れから、地味ないでたちの倫子が逆に気に入られる逆転展開? と思いきや、家治は「倹約と無様(ぶざま)は異なる」とばっさり。そんな簡単にはいい話しにならず、ここで倫子が救われる? と思うたび、ことごとく予想はかわされ続けるのだった。 最後の最後で、倫子が慕っていた幼馴染の公家・久我信通(鈴木仁)からの手紙を家治が倫子の眼の前で無惨に破ったことが、実は思いやり(倫子にとってつらい返事だった)だったのではないかという希望が視聴者にはもたらされる。
次のページ 
家治はツンデレ?ラブを盛り上げる物語構想だと思いたい
1
2
3
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ