朝ドラ『あんぱん』で圧巻の存在感 54歳スター声優の“演技力の秘密”「実は学生時代の夢は…」
『ゴールデンカムイ』(2018~2023年)や『呪術廻戦』(2020~2023年)など、スター声優として活躍する津田健次郎は、俳優としても目を見張る演技力である。
今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)では新聞記者役でレギュラー出演。今田美桜らとの初共演シーンで、津田健次郎は演技空間を完全に支配していた。圧倒的な采配ぶり。そこには誰もが思わず納得する理由がある。
それは学生時代の津田健次郎が映画監督を目指していたことにある。男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。
竹野内豊や加瀬亮、吉田鋼太郎、中島歩など、中堅ベテラン名優たちがそれぞれの味わいを醸す朝ドラ『あんぱん』だが、新たにレギュラー出演者となった津田健次郎もまた目を見張る存在である。
初登場は第13週第64回。戦後、教職を辞した主人公・若松のぶ(今田美桜)は速記の勉強に打ち込んでいた。力試しとして聞き書きにでかけるのぶは、日中から闇市で酒を飲む客たちの会話を書き取る。
耳を傾けながらメモ用紙に鉛筆で書き付けていると、ひと際張りのある声の持ち主がいる。津田演じる高知新報の主任・東海林明である。部下の岩清水信司(倉悠貴)相手にへべれけながら、愉快に弁舌をふるう。
東海林は自分に熱心な眼差しを注ぐのぶにすぐに気づく。「何メモしちゅうが」と言われ、少しぎょっとするのぶ。「敵国のスパイか」と言う東海林に対して岩清水が「そんなわけないでしょ」と間に入りつつ、愉快な誤解はすぐに解ける。東海林は、あながちただ酔っぱらっているだけというわけでもない。
のぶに声をかける最初の眼差しはやけに鋭い。相手が何をしているかわかっていないようで瞬時に見抜いているようなにらみ。実際はのぶが速記の力試しをしているなんてまったく検討もついていないのだが、それでもとにかく物事の本質を捉える力が並外れている人物だということだけはこの眼差しからわかる。
そりゃ新聞記者なのだから当然の洞察力なのだが、東海林明という役柄をへべれけ状態の眼差しひとつで明確に表現する津田の演技が的確過ぎる。へべれけと眼差しのさじ加減が絶妙な、酔っぱらい役の本質を捉えた名演でもある。
レギュラー出演者の目を見張る存在感
酔っぱらい役の本質を捉えた名演
東海林は自分に熱心な眼差しを注ぐのぶにすぐに気づく。「何メモしちゅうが」と言われ、少しぎょっとするのぶ。「敵国のスパイか」と言う東海林に対して岩清水が「そんなわけないでしょ」と間に入りつつ、愉快な誤解はすぐに解ける。東海林は、あながちただ酔っぱらっているだけというわけでもない。
のぶに声をかける最初の眼差しはやけに鋭い。相手が何をしているかわかっていないようで瞬時に見抜いているようなにらみ。実際はのぶが速記の力試しをしているなんてまったく検討もついていないのだが、それでもとにかく物事の本質を捉える力が並外れている人物だということだけはこの眼差しからわかる。
そりゃ新聞記者なのだから当然の洞察力なのだが、東海林明という役柄をへべれけ状態の眼差しひとつで明確に表現する津田の演技が的確過ぎる。へべれけと眼差しのさじ加減が絶妙な、酔っぱらい役の本質を捉えた名演でもある。
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