さらに注目すべきは、へべれけという自由な振る舞いを演じるとき、津田は一点集中の眼差しを駆使して共演者(今田美桜と倉悠貴)と共有する演技空間を完全支配していること。
聞き書きするのぶと東海林たちの位置関係を確認しておく。テーブル席に座る東海林たちに対して軒下にいるのぶは2メートルほど離れた場所から見つめている。両者ともにその場からは動かず定位置にいる。
のぶがただ一方的に見ているだけでは、場面描写として活気づかない。そこで東海林がのぶにぎろりと視線を向けることで、離れた場所にいる役と役同士でも積極的な相互関係が紐づけられた空間が成立する。その演技空間をなんともさりげない視線移動で、津田は手際よく采配する。

年少の共演者を完璧にリードして慣れた手つきで演技空間をこしらえたあとは、やや離れた場所にいる今田と目の前に座る倉に交互に視線を遣りながら、この縦横無尽な酔っぱらい記者役を演じる。
自由に楽しんで演じているようで、その実、緻密に空間を把握しながら、共演者との距離を計測するかのような演技。『ゴールデンカムイ』や『呪術廻戦』など、スター声優仕事をこなしてきた津田は、俳優としても盤石のプランを組んでいるからこそ、あの演技力。
それにしても空間把握のあまりの的確さはちょっと俳優の領分を超えているよなと思ったら、学生時代の津田はどうやら映画監督を目指していたらしい。古今東西の映画を見漁った大学時代に好きになった監督は、イタリア映画界の巨匠フェデリコ・フェリーニだと過去のインタビューで語っている(Girls-Style掲載インタビュー)。
映像の魔術師と呼ばれたフェリーニによる演出風景を捉えた(メイキング)ドキュメンタリー映画『フェリーニ サテリコン日誌』(1971年)でフェリーニは、魔法の一振のような指示で、撮影セット内の俳優たちを動かしていた。こうした空間把握、完全支配する演出力が、津田健次郎の演技力にも感じられるんだなと思わず納得した。
<文/加賀谷健>
加賀谷健
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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