朝ドラ『あんぱん』で圧巻の存在感 54歳スター声優の“演技力の秘密”「実は学生時代の夢は…」
空間を完全支配する津田健次郎
映画監督を目指していたことに思わず納得
年少の共演者を完璧にリードして慣れた手つきで演技空間をこしらえたあとは、やや離れた場所にいる今田と目の前に座る倉に交互に視線を遣りながら、この縦横無尽な酔っぱらい記者役を演じる。
自由に楽しんで演じているようで、その実、緻密に空間を把握しながら、共演者との距離を計測するかのような演技。『ゴールデンカムイ』や『呪術廻戦』など、スター声優仕事をこなしてきた津田は、俳優としても盤石のプランを組んでいるからこそ、あの演技力。
それにしても空間把握のあまりの的確さはちょっと俳優の領分を超えているよなと思ったら、学生時代の津田はどうやら映画監督を目指していたらしい。古今東西の映画を見漁った大学時代に好きになった監督は、イタリア映画界の巨匠フェデリコ・フェリーニだと過去のインタビューで語っている(Girls-Style掲載インタビュー)。
映像の魔術師と呼ばれたフェリーニによる演出風景を捉えた(メイキング)ドキュメンタリー映画『フェリーニ サテリコン日誌』(1971年)でフェリーニは、魔法の一振のような指示で、撮影セット内の俳優たちを動かしていた。こうした空間把握、完全支配する演出力が、津田健次郎の演技力にも感じられるんだなと思わず納得した。
<文/加賀谷健> 1
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