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NHK大河『べらぼう』28歳俳優の”一瞬の色っぽい動作”に注目。えらく感動したワケとは

 横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合)第25回にはえらく感動した。  横浜演じる主人公・蔦屋重三郎が成長する物語の運びがうまいとかそういうことじゃない。横浜の演技を捉えるカメラワークとそれに合わせた彼の細やかな動作。横浜流星の微動こそ視聴者の心を大きく動かすと思ったのである。  男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作第25回に感動した理由を解説する。

横浜流星の演技が通年毎週供給される贅沢

『べらぼう』© NHK

『べらぼう』© NHK

 今年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下、『べらぼう』)を見る醍醐味とは、とにかく主演俳優である横浜流星の軽妙かつ重厚で流麗な演技を楽しむことにある。ここに議論の余地はないだろう。  当たり前だが、大河ドラマ俳優は通年で毎週テレビ画面に写る。NHKドラマ初出演にして大河ドラマ初主演という大抜擢の横浜流星の演技が、通年毎週供給されるこの贅沢(!)。  いくら大河ドラマといえども一年を通して放送されるとなると、物語の展開がもたついたり、俳優の演技にもメリハリが薄れることは少なくない。でも本作は違う。一介の奉公人から出版界を牽引する存在に成り上がる主人公・蔦屋重三郎の成長譚を体現する横浜は、視聴者を一瞬たりとも飽きさせず、蔦重が繰り出す新たな表情を毎週あざやかに更新してくれる。

重三郎の成長を表現する緩急

 奉公人として吉原中を走り回ってあくせく働く重三郎が沸き立つ野心の足がかりにしたのが、吉原を紹介する案内書・吉原細見の作成作業だった。地本問屋・鱗形屋の主人である鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)の助力を得て、工夫をこらした細見を完成させた。  重三郎を養育してきた駿河屋の主人・駿河屋市右衛門(高橋克実)ら吉原のおやじ衆の激しい反発がありながら、重三郎の秘策は徐々に評価を集める。本作前半部では茶屋奉公の身からいよいよ本作りに精をだす重三郎の奮闘が痛快そのもの。  そうして出版を生業にすることを決意する重三郎が結果的に取って変わろうとするのが、細見作りに助力した鱗形屋だった。最初はあくせくしていた重三郎が次第に商売人の才覚を発揮する過程で、横浜は眉根を動かすちょっとした力加減や特徴的なにやけ顔の緩急によって、その成長を微に入り細に入り目にみえるかたちで表現する。
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完璧な演技プランで大役を“生きる”こと
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