朝ドラ『あんぱん』27歳俳優=達人だと確信した“絶妙な表情”「セリフを発する前に…」
北村匠海は、何ともいえない表情と何ともいえない動作を作る達人である。今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)では、その達人の演技が随所で輝く。
北村演じる柳井嵩が紆余曲折を経て新聞社の入社試験を受け、何とか入社する第15週は特に見せ場が満載である。
男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作で極まる北村匠海の達人の演技を解説する。
戦後を描く『あんぱん』は実に晴れやかである。第13週第65回、軍国主義教育の責任を感じて教師を辞めた主人公・若松のぶ(今田美桜)は、高知新報の記者として採用される。
嬉しさのあまり「たまるか」(土佐弁で感嘆を表す)と何度も呟きながら実家に走る場面。カメラはその運動感を下手から上手へフォロー。後続するカットがいい。引きの絵。のちに夫になる柳井嵩(北村匠海)と彼の同級生・辛島健太郎(高橋文哉)が座っている前をのぶが走り過ぎる。
走るのぶを嵩が上手から下手へ視線を動かして静かに追う。のぶがフレームアウト。嵩と健太郎による慎ましいツーショットになる。カメラは嵩と健太郎にポンと寄るというカット繋ぎなのだが、動と静が躍動する一連の場面連鎖が素晴らしい。
本作は北村匠海と高橋文哉を写すツーショットがとにかくどれも華やぐ作品だと思うのだけれど、上述したツーショットが今のところベストショット。嵩と健太郎の息づかいが調和する会話中、ふたりの口元からぽふぽふ発する白い息がなまめかしい。
ツーショットからカメラはさらに嵩に寄る。嵩が「俺はね」と言っておもむろに立ち上がり、北村のアップを捉える。特殊加工で抽出したような純度がある。カメラのポジションとアングルにも注目。
ローポジションでややローアングルから捉える北村の表情はほんと美しい。表情を含む顔そのものが何かを語りだすようで、でもはっきりとは出しきらないところがまた美しい。ベストポジション、ベストアングルで抜く北村匠海の表情イコール表現みたいな芸術世界がそこにはある。
動と静が躍動する一連の場面連鎖
北村匠海の表情イコール表現
本作は北村匠海と高橋文哉を写すツーショットがとにかくどれも華やぐ作品だと思うのだけれど、上述したツーショットが今のところベストショット。嵩と健太郎の息づかいが調和する会話中、ふたりの口元からぽふぽふ発する白い息がなまめかしい。
ツーショットからカメラはさらに嵩に寄る。嵩が「俺はね」と言っておもむろに立ち上がり、北村のアップを捉える。特殊加工で抽出したような純度がある。カメラのポジションとアングルにも注目。
ローポジションでややローアングルから捉える北村の表情はほんと美しい。表情を含む顔そのものが何かを語りだすようで、でもはっきりとは出しきらないところがまた美しい。ベストポジション、ベストアングルで抜く北村匠海の表情イコール表現みたいな芸術世界がそこにはある。
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