スーパーマンは「移民」だった。排外的ムード感じる選挙前、元TBSアナの私が思ったこと
2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(39歳・以前は小林悠として活動)。
TBS退社から8年経った今年、紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
【過去記事】⇒連載「アンヌ遙香の北海道シングルライフ」を読む
第43回となる今回は、アメリカでちょっとした論争を呼んだ映画『スーパーマン』の監督の発言をきっかけに、昨今の日本で感じる“排外主義”的な空気について考えます(以下、アンヌさんの寄稿です)。
7月20日は参議院議員通常選挙。私は期日前投票で投票を済ませましたが、皆さんはいかがですか?
この時期、あまり政治的な事を前面に押し出した文章を書きたくないのですが、最近ちょっと目についたニュースがありましたのでご紹介します。
7月13日付のNHKニュースによると、アメリカでは今、『スーパーマン』の新作映画をめぐってちょっとした論争が起きているんだとか。
きっかけは、監督のジェームズ・ガン氏がイギリスの「タイムズ」紙の取材で、「スーパーマンはアメリカの物語だ。ほかの場所から来てその国で暮らす移民だ」と語ったこと。
同ニュースによると、これに対してトランプ前大統領の支持者や保守的なコメンテーターからは「イデオロギーを押しつけている」などと反発の声があがったそうです。また一方で、映画を観た人からは「スーパーマンは移民として義務を果たし、この国に尽くしている」といった肯定的な声もあったのだとか。
ガン監督は、映画会社が公開した動画の中でこんなふうにも話しています。
「私たちが住む世界は決していいとは言えません。私が考えるスーパーマンはとても優しく思いやりがあります。スーパーマンには強さより優しさが大切なのです」
ここでガン監督が投げかけているのは、アメリカのトランプ政権は強固な排外主義を掲げていますが、そのアメリカの「魂」ともいえる「スーパーマン」そのものが、実は移民だということを忘れていませんか? という問いかけ。
なにを隠そう、うちの一家(私は北海道出身北海道在住ですが、父がアイルランド系アメリカ人)は幼いころクリストファー・リーヴ主演バージョンのスーパーマンが大好きで大好きで、なつかしの金曜ロードショーで放送されたものなどをVHSに録画しては繰り返しよく観たものでした。
絵にかいたように美しいクリストファーリーヴが、普段はちょっとドジな眼鏡っこの新聞記者クラークケントとして生活し、市民の危機を聞き付ければ電話ボックスにさっと入り込み、あっというまにスーパーマンに。澄んだ青い瞳はキラキラしているだけではなく、慈愛と優しさが満ちていました。
私の中の「ヒーロー」の原点はあの70年代、80年代スーパーマンと言ってもよいでしょう。私は今回のこのニュースを耳にしてはっとしました。そうなのです。
今でも映画の映像を覚えていますが、スーパーマンは滅亡の危機にひんした惑星クリプトンから乳児のときに地球に送られてきて、カンザス州の夫婦のもとで育てられたという、ちょっと「かぐや姫」を思わせるような設定だったのでした。
たしかにそうだった。いわれてみれば彼は「移民」なんだわ、なんて膝を打った私ですが、実はこの設定、原作者のルーツがヨーロッパからアメリカに逃れたユダヤ人移民だったことも反映されているとも言われているんだとか。これは初耳だった。
アメリカはそもそも移民が集まって構成された国。排外主義を掲げる人々のルーツをたどっていけば、必ずどこかで「移民」としての背景にぶつかるわけです。
「スーパーマンは移民」監督の発言が論争に
スーパーマンは私にとって「ヒーローの原点」
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