朝ドラ『あんぱん』で回を重ねるごとに“色っぽく”なっていく24歳女優。控えめな上目遣いに注目
河合優実が大ブレイクすることは、ほとんど確信に近いものだった。何をどう演じても今の彼女は、MVPに輝きまくる存在だ。
時の人になった河合優実が、朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)で演じる妹役は、俳優としてのコンディションが特にいい気がする。
本作には、そそと控えめで凛とした河合優実の演技を味わう醍醐味がある。コラムニスト・加賀谷健が解説する。
今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』第22週は、主人公・柳井のぶの夫・柳井嵩(北村匠海)が大活躍だった。
『アンパンマン』の元になる一枚は描いたものの、漫画家としてはなかなか代表作を生み出せないでいた。それでも作詞家、テレビ番組出演など、著名な存在にはなった。
第108回では戦中の恩人・八木信之介(妻夫木聡)が立ち上げた会社で嵩の詩集を出版。サイン会も大盛況だった。一方で、上京後に映画評論家として頭角を現したのぶの妹・朝田蘭子(河合優実)が、八木の会社でも文章を書いたり、事務仕事を手伝っていた。
少女時代を過ごした高知から東京に舞台は移り、蘭子の成長物語もまたどんどん味わい深くなる。淡々と無駄なく、でも色っぽく蘭子役の変化を表現する河合優実の演技に惚れ込む者として、第22週のMVPは蘭子のさりげない一言に贈りたいと思う場面がある。
同回、どうやら八木に気持ちを寄せているらしい蘭子が、鏡台の前に座り、口紅をぬる。少し孤独な唇をあざやかな紅色がそっと縁取る。一連の動作をそそと控えめに演じてみせる河合優実。
そのあと、のぶと妹の辛島メイコ(原菜乃華)が訪ねてくる。「恋でもしちゅう」とメイコに言われた蘭子が「ローレン・バコールの真似して、赤い口紅つけてみただけやって」と口元を少しだけ歪ませて答える。
映画評論家なのだから、古典的ハリウッド映画の大女優の名を日常的に口にするのは当然だが、わざわざ「ローレン・バコール」という固有名詞を河合優実に言わせたところにハッとする。
ローレン・バコールは、「ザ・ルック」といわれた特徴的な上目遣いとクールな美麗を極めた演技で、見る者を虜にした。19歳で出演したデビュー作『脱出』(1944年)の主演俳優ハンフリー・ボガートと1945年に結婚。ハリウッドきってのおしどり夫婦として知られた。
第22週のMVPは蘭子のさりげない一言
「ローレン・バコール」という固有名詞
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