30歳なのに身体はまるで老人。新幹線や外泊すら怯えてしまう「虚弱体質」の切実な生きづらさ
特定の病気ではないのに体力がなく、体調不良に悩まされる“虚弱体質”に注目が集まっています。文筆家・絶対に終電を逃さない女さんは、「20代なのにまるで老人のような身体」で生きてきたといいます。30歳になった現在、どのような日常生活を送っているのか。リアルな「虚弱エッセイ」をお届けします。

※本稿は、『虚弱と歩く』収録のエッセイ「自由になってみたい」(絶対に終電を逃さない女)の一部を再編集したものです。
健康に支配された果てしない日常から逃れることができない。長い商店街を歩きながら、そう思った。
今年一月下旬の土曜日の昼に大阪でのトークイベント出演の仕事があり、前乗りした金曜日だった。前乗りするかどうかもかなり悩んだ。
まず長時間の移動が怖い。東京から大阪の会場までの三時間程度、電車と新幹線のシートに座り続けるのは、腰痛と痔のリスクが高い。過眠の傾向があり座っていると眠ってしまうことが多く、新幹線で眠ると首が凝って頭痛が生じるリスクもある。さらに寝不足だと乗り物酔いをしやすく、以前長距離バスに乗った際に眠ってしまったせいで頭痛と車酔いの末に嘔吐したこともある。こうして移動によって生じた痛みや疲れを抱えたままイベントに出ると、頭が回らず元々下手な喋りがますます下手になることがあるのだ。
かといって、外泊も怖い。前乗りすれば移動の疲れを癒せるとは限らず、むしろ増幅させる恐れもある。日課の朝晩のラジオ体操をするスペースが、普通のビジネスホテルのシングルルームにあるだろうか。自宅で座るのは常に高級オフィスチェアだが、ホテルの普通の椅子やベッドに座るとやはり腰痛と痔になりやすい。加湿器のあるホテルを探すとして、快適な湿度を保てる保証はない。寝具が自分に合うかわからず、睡眠の質が悪化すれば余計に疲れる。日帰りよりも荷物が増えるので肩凝りの悪化は避けられない。
言うまでもなくイベント自体も疲れる。トークイベントというのは基本的に横並びで対談相手のほうを向いて喋るので、いつも開始十分で相手と反対側の首と肩が凝って痛みだす。いつも、首と肩痛いなあと思いながら喋っている。だいたい翌日まで痛みが消えない。さらに会場には普通の椅子しかないので、ここでも腰痛と痔が怖い。なのでイベントの仕事の前後一週間はなるべく外出の予定を入れず、いつにも増して健康に気を遣って体調を整えるようにしている。
いや、どちらかというと大事な予定の直後に体調を崩すことのほうが多いので、イベントの翌日以降に皺寄せが来るパターンもある。最悪二週間くらい引きずるだろう。特に、新幹線のシートに往復六時間、会場の椅子に二時間座るとなると、寒さによる血行不良も手伝って痔になる確率は経験からして80%といったところだろうか。
私はまだ30歳だが、老人のように身体のあちこちが痛くて、筋力がなく、疲れやすい。それらの慢性的な体調不良や体力不足のはっきりした原因が特定できず、多少の波もあるため、「これをしたら体調が悪くなって社会生活に支障が出るかもしれない」という不安を常に抱えて生きている。遠方での仕事は初めてだったこともあり、あまりの不確定要素の多さに、予定を立てる時点で疲れ果ててしまった。
もうどうしようもない。どちらを選んでも体調が悪くなって失敗するリスクは同じくらいある。私は初心に帰ることにした。なぜ大阪でのイベントのオファーを受けたのか? 大阪に行きたかったからだ。
子供の頃はたまに旅行に連れて行ってもらったが、大人になってから泊まりがけの旅行をしたことは一度もなく、日帰りですら二度ほど、一人旅なんてしたことがなかった。この通り体力的な余裕がなく、金銭的な余裕もない。仕事であれば交通費を出してもらえて、ついでに観光ができる。別に大阪にこだわりはない。ちょっと遠くに行けるならどこでも良かった。
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『虚弱と歩く』は、芥川賞作家、エッセイスト、ミュージシャンなど13名の豪華書き手が集結した、史上初・虚弱体質のエッセイアンソロジー。さまざまな虚弱の生き様がつづられた一冊です。
【絶対に終電を逃さない女】
1995年生まれ。大学卒業後、体力がないせいで就職できず、専業の文筆家となる。様々なWebメディアや雑誌などで、エッセイ、小説、短歌を執筆。単著に『虚弱に生きる』『シティガール未満』、共著に『つくって食べる日々の話』がある。
<文/絶対に終電を逃さない女 構成/女子SPA!編集部>












