“コロナ疲れ”で心と体がつらい時。読むだけでも楽になる毎日のヒント
コロナ疲れ、感じていませんか?
「HSP(Highly Sensitive Person)」という言葉をご存じでしょうか。HSPは日本語では「とても敏感な人」「敏感すぎる人」と訳される概念で、相手の気持ちやその場の空気、光や音など、まわりの人が気づかないような些細な変化をも敏感に感じ取る人のことをいいます。
いわゆる、「神経質」「気にしすぎ」「真面目」などと言われがちなのですが、じつは小さなことによく気づくのは性格ではなく「気質」であり、生まれつき脳の神経システムに違いがあるのだそう。
HSPの特徴は、いいことも、悪いことも「感じる力が強い」が強いということ。そんなHSPたちにとって、連日の新型コロナウイルス関連の報道はあまりにも刺激が強く、心をすり減らしている人も多いようです。
そこで今回、HSPを「繊細さん」と呼び、『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』『今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト』などの著書が話題の、HSP専門カウンセラー武田友紀さんを取材。コロナ禍のいま、HSPの人が気をつけるべきことを伺いました。
ステイホームな自粛の毎日、日常は大きく変わり、終わりの見えない閉塞感に世の中の空気全体がゾワゾワ――。繊細さんに限らず、「コロナ疲れ」でからだや心の不調を感じる人にとって、毎日が少し楽になるヒントとなるはずです。
「繊細さんの中には、刺激にあふれる職場より在宅勤務になって気持ちが楽になったという人もいます。今回、新型コロナウイルスの報道や自粛生活をどう受け止めているかは、繊細かどうかよりも個人の置かれた状況が大きく影響していると思います。
その置かれた状況が個人によってあまりに違いすぎるので、それが危機感の落差や意見のズレにつながっていて、社会に窮屈な空気が蔓延している。繊細さんにお話を伺うと、ウイルスそのものではなく、それに対する世の中の反応や変化でつらくなっている方が多いですね」
武田さんによると、もともと、繊細さんはたくさんのことを感じて、感じたことをひとつひとつ考えて処理をしながら進めていくのだそう。
たとえば、買いものひとつにしても「透明ビニールのしきりができたんだ」「店員さんは大変だろうな」「お釣りもトレイに入れなきゃいけないよね」など、考えながら動く場面が増え、そのぶん、疲れやすくなるのだとか。
「情報の処理量が多くなっているのと同時に、心を揺さぶられるシーンも増えていますよね。
繊細さんはミラーニューロンの働きが活発だといわれていて、相手の痛みを受けとめやすいんです。大変な状況にある人々の話を報道で見聞きした時、繊細さんのなかには『申し訳ない』という気持ちになってしまう方がいる。じつは、そこがいちばん心配なんです」
感染のリスクがありながらも一生懸命、働いている人を見て、「私は何もできていない」と無力感を感じたり。休校中、兄弟姉妹の世話に大忙しのお母さんを見て、「うちは一人っ子で楽をしている」と自分を責めたり。自分自身のいまの“困りごと”を冷静に見られなくなってしまい、ストレスや疲れにつながってしまうというわけです。
「結果、情報を受けとめて判断するときに、『○○しなくてはならない』という、ねばならない系の思考になってしまう。『何か役立つ情報をSNSで発信をしなくちゃ』と頑張ってしまったり、『他に大変な人がいるんだから自分は我慢しなければ』と気持ちを押さえ込んでしまったり。“つらい気持ち”というのは、誰かに打ち明けたり、自分で自分をいたわったりと、どこかで受け止める必要があるのですが、『外に出してはいけない』『つらいと思ってはいけない』と抑え込むと、感情の出口がなくなって体調を崩してしまうんです」
逆に言うと、ストレスやイライラを無遠慮に爆発させている人は、自分の感情を外に出しているので自身の体は守ることができるのだとか……うらやまし、くはない!
「頑張っている人がいるから、我慢しなきゃ」というのは、まさに、ここ3か月の社会の空気。かといって、他者を攻撃するのでは何の解決法にもなりません。では、どうしたら、少しでも気持ちを落ち着かせることができるのでしょうか?
コロナ報道に「申し訳ない」気持ちになる人も
コロナ疲れの対処法。自分の“視点”を意識してみて
1. インターネットから距離を置く
まず、武田さんが指摘するのが「インターネットから距離を置く」ということ。不安からついついネットニュースを見てしまう人も多いはず。でも、有益な情報を得ようと見てみると、人の悪意が渦巻く論争を目にしてどんより、という経験はみなさん、あるのでは? 「ネットが悪いわけではなく、自分が生活しているリアルな社会を見ることが大切なんです。たとえば、ドラッグストアの店員さんがカスタマーハラスメントを受けているというのはネット上ですぐに話題になりますよね。カスハラは実際にあって問題だと思います。でも、自分の身の回りはどうだろうと冷静に見てみると、自分は店員さんに感謝しているし、同じように店員さんに丁寧に接している人もいる。ネットで言われることが世の中のすべてではないんです」 そもそも、ネットの世界では話題になること=大変なことがクローズアップされがち。それが社会そのものだと思ってしまうとしんどくなってしまう。また、「ネットだから」とわかったうえだとしても、人の悪意を目の当たりにするとヘルス・ポイントどんどん削られてしまいます。 だからこそ、「SNSやインターネットを見過ぎることで不安感が大きくなるのであれば、離れることが大切」なのです。 「でも、ただ『見ない!』と決めただけでは、それを守るのはとても難しいですよね。なので、そのインターネットを見るという行動を、他の行動に置き換えてみてください。 まず、自分がどんなときにネットを見てしまうのかを把握して、『このままではずっと見続けちゃう……』というときは、スマホで漫画を読もう、あるいは、ほっこりするサイトをみよう、というようにマイルールを決めておくのです。ネットを一切見ないのは難しくても、「害のない行動に置き換える」のならばやりやすい。これを意識的に続けることで、不安をあおる記事とは距離をおけるようになります」2. 納得のいくまで調べてみる
また、「情報を遮断するのもひとつの手ですが、むしろ、どんどん調べるというのも情報の扱い方の方法のひとつ」と武田さん。 SNSは見ないにしても、内閣府の発表や論文を読む、感染症の歴史について調べる、経済政策について本を読むなど、自分で深く考えるというのも、恐怖や不安を減じる方法になるといいます。 「この3か月を見れば大変ですけど、人類はこれまで何度も感染症と戦っているわけです。人類の歴史というところまで視点を引いてみる。毎日、更新される情報か人類全体の流れにフォーカスするのか、何にフォーカスするかの違いですが、全体像が見えてくると、一喜一憂しなくてすみます。深く考えることは繊細さんが得意なことですし、哲学的なことを考えるのが好きな方も多い。徹底的に調べたり考察したりと、自分の得意技を使って不安に対処することもできるんです」1
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