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箕輪厚介氏のセクハラ報道で噴出。女性ライターが語る“悪質編集者たち”からの被害

元上司が女友達に「新規連載の相談」。友人関係にもヒビが……

「元上司のセクハラで、大切な友人を失いかけました」  そう打ち明けるのは、C子さん。大学卒業後に出版社に就職、編集業務を経て2年前にフリーランスのライターとして独立。今はグルメ雑誌やタウン誌に寄稿している。 「これはかつての上司で某エンタメ誌の編集長なのですが、私の周りの女性ライターにFacebook経由で、『新規の連載の相談をしたい。』とメッセージを送りつけていたんです。しかも私には一切相談なし。メッセージを送られた友人は『C子ちゃんの知り合いだから』とメッセージを返信したらしいのですが、それをきっかけに公開されている友人の投稿にも、頻繁に絡むようになりました。心配になって聞いてみたら、どうやら『アナタは美しいので書いているだけではもったいない』『ぜひ二人きりで食事に行きませんか』とかなり粘着質に迫ってきたそうです」  話を知ったC子さんは激怒。 「まさかと思ってその元上司に問い詰めたところ、私の他の書き手仲間にも直接コンタクトを取っていたことがわかりました。フリーランスなら、DMやメールで新規の案件が舞い込むことはよくある話。しかし紹介者をスルーして、仕事を口実に直接ふたりきりで会いたがるのはご法度です。このままでは私の信頼もなくなるので、ブロックしました」  そのほかにも「グラビア撮影のとき、同行していた編集者から『お前はあのグラドルと比べて、全然胸がない!』『女子力が足りないからちょっとは見習え』など、イジりのネタにされた」という声も。  さらに作家の大泉りかさんに至っては、「打ち合わせ中に上司が突如、ズボンを降ろして自慰をした」など、もはや常識では考えられない被害を訴えている。(詳しい内容はコチラで読むことができます)  一方で「私もセクハラをしているかもしれない」と語るのは、ルポルタージュを得意とするライターのEさんだ。 「恋愛記事の取材の際、一緒にいた新卒の男性編集者に『まだ童貞なの?』『若いうちはどんどん遊ばなきゃ』とつい言ってしまったんです。そもそも『男は遊んでなんぼ』なんて価値観は古すぎる、とそばで聞いていたカメラマンからたしなめられましたね。いくら編集者が発注元でこちらは下請けといっても、古参のライターと新卒の編集者だったら、編集者は言い返せないですもんね。ライターで、女性だからといっても、いつ自分が加害者になるかわからない。今では深く反省しています」

書き手は下請け、出版されるまで原稿料が入らない

女性ライター フリーランスのライターにとって、版元の社員である編集者は仕事の発注元だ。いわば「下請け」となっているライターにとって、発注元からのセクハラに真正面から断ることが容易ではない。たとえ断ったとしても、のちのちの仕事に支障をきたすことを恐れ、泣き寝入りすることも多い。  さらに通常、原稿料は出版されてから、ウェブメディアなら配信された後に支払われる。松浦氏の自伝のようになんらかの事情で出版計画が頓挫したり、配信されなかったら、それまでの労働対価が支払われない可能性は大いにある。いわば、原稿料は人質に取られている状態だ(当然、この原稿も例外ではない。発注の段階で期日や原稿料は明示されているが、女子SPA!さんとの信頼関係の上で書き進めている)。  残念ながら現在の出版業界では、書き手が作業に取り掛かる前に契約書を結んだり、前金が支払われることは少数だ。特に校了を待たずして次号の企画出しや取材を進める週刊誌のような現場では、その都度厳密な契約書を締結するのは現実的ではないとも言える。  しかしフリーの書き手にとっては自分が何十時間も費やした労働の対価が支払われるか、はたして無事に出版されるか、それらは発注元である編集者のさじ加減ひとつで決まってしまう。また支払いが期日通りに入金されるかの保証もない。厳しい言い方だが、口約束と信頼ベースで成り立っている出版業界のビジネスモデルが、セクハラやパワハラが起きやすい構造になっている、といっても過言ではない。  また、被害を訴えた者に対して「それまで仕事を振ってもらって、おいしい思いをしたんでしょ」「二人きりで飲みに行くなんて、隙があったのでは」などという発言は出版界に限らず、被害者を追い詰めていくセカンドレイプになりかねない。  これまでも再三、被害者たちが声を上げてきたセクハラ、パワハラ問題。それらを報じ続けてきた出版業界自体にも、健全化が求められている。 <取材・文/アケミン>
アケミン
週刊SPA!をはじめエンタメからビジネスまで執筆。Twitter :@AkeMin_desu
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