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「20代で隠居」した男性に直撃。“月収5万”でも快適生活の謎に迫る|辛酸なめ子

隠居が定着しないでほしい…

「ちょっと離れた所から、人間を見ているのが好きなので、外出自粛は解除されましたが隠居がメインストリームになって欲しくないというのが本音です。これが主流になると観察対象がなくなって困るなっていうのがありますね」 隠居の良さに気づかないでほしい… 隠居は傍観者であるべき、というのが扁理さんのスタンスのようです。皆が隠居になったらGDPや経済がまずいことになるので、収束後はまたそれぞれ仕事に励むライフスタイルに戻っていった方が良さそうです。一度隠居生活の幸せを知ってしまったらなかなか戻れないかもしれませんが……。 「ふだんから隠居生活してるとそんなに社会の影響受けないっていうか、逆にこういう外出自粛の事態になった時に、外界のいろいろなものごとに依存させて自粛できないようにさせておくことが経済社会の狙いだったんだなってわかりますね」  たしかにコロナ以前は様々なメディアで欲望を煽られ、そのために必死で働いて……というループにハマっていたかもしれません。そうやって俯瞰して見られるのが隠居の強みです。 「欲望に終わりが見えないのが辛い。際限ないですよね」と、扁理さんは達観しています。  意識高い系を超越した、霊格高い系の隠居男子。外界に刺激を求める代わりに、思索にふける時間の余裕があるのでしょう。こうやって隠居ならではの格言や叡智をシェアしてくれて世の中に還元しているので、納税額が少なくても許されるような……。町内にひとりはいてほしい存在です。隠居の放つ穏やかなヴァイブスで、世の中が平和になることを期待します。 <文&イラスト/辛酸なめ子> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
辛酸なめ子
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著書は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。
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