夢のタイ生活が、コロナで解雇に…行き場がなくなった女性たち
コロナ禍で過去最悪の状況となりつつある「女性の貧困問題」。従来からの当事者はもちろん、貧困とは無縁だったはずの女性たちも窮乏に陥っている。本企画ではコロナ禍で経済的危機に瀕している女性たちに密着取材を敢行。彼女たちの切実な胸の内に迫った――。
コロナの影響で貧困にあえぐ女性が急増しているのは国内に限った話ではない。タイ・バンコク在住の三宅公佳さん(仮名・28歳)が勤める日系広告会社も4月以降の売り上げが激減。6月末で解雇されてしまい、現在は無職だ。
「タイに進出する日系企業の広告を扱っており、私はその担当でした。しかし、コロナのせいで契約更新も新規の依頼もほとんどがストップ。覚悟はできていましたが、解雇はやっぱりショックです」
彼女はオーストラリアでのワーキングホリデーを経て、’16年から今の会社で勤務。月収は約12万円と、同僚のタイ人のほぼ倍だったため、真っ先に人員整理の対象になった可能性が高いという。
「ただ、日本人の現地採用としては平均かそれより少し多い程度。諸手当がついて年収倍増が当たり前の大手企業の日本人駐在員とは、絶望的な収入格差があります。特にバンコクはタイで最も物価が高く、私の収入では無駄遣いを控えてなんとか暮らせる状態でした」
住まいはバンコクの現地採用者では平均的な家賃3万7000円のアパート。光熱通信費は月1万5000円、食費に3万円と日本での出費とそう大差ない状態だ。
「ウチのような安アパートはキッチンがなく、食事はもっぱら屋台や安食堂でのテイクアウト。食費や買い物を切り詰めないと日本への一時帰国の費用も用意できない。日本食レストランでの食事も私にとってはたまの贅沢でした」
好調だったタイ経済はコロナのせいで暗転。世界銀行は同国のコロナ関連の失業者数が830万人に達するとの予測を発表している。(2020年7月2日アジア経済ニュースより)
そんななか、最初はバンコクで転職先を探そうとするも「求人サイトには『現在は採用を中止している』という企業ばかり。もう完全に諦めました」と帰国を決意。
「もともと海外で働きたいとの夢があり、暮らしはラクじゃなくてもバンコクでの生活には満足していたはずでした。辞める際、タイの法律にのっとって給料6か月分に相当する解雇補償金を受け取りましたが、クビになってようやく貯金ができるのも皮肉ですよね」
7月中には帰国する予定だが、いつも利用するLCCは欠航が続いているため、滞在費を切り詰めて6万円のチケットを購入しなければならない。帰国直後は実家に身を寄せるそうだが、その先のことは決まってないとか。
「海外で働いていた経験を生かすにも特別なスキルもなく、英語もタイ語も日常会話レベルでアピールできるほどでもありません。これで彼氏がいれば結婚に逃げられたけど、昨年末に別れたので」
本当に大変なのは、日本に戻ってからかもしれない。
日系企業を6月末で解雇。転職も難しく帰国を決断
採用を中止している企業ばかりで帰国を決意することに
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