ある朝のブリーフィング(業務確認のようなもの)。

「
これから身だしなみのルールを強化します。まずは制服の汚れ、クリーニングに出していますか? スカーフがシワシワになっていませんか?」
はい、この辺はOK。(余裕余裕……)という心の声が漏れたのか、はたまた口もとが緩んだのか……。一瞬、リーダーと目が合ったような。ドキッ。
「最後に今回一番伝えたいルールね、前髪!
前髪はオールバックか横に流しておでこは全開にすること。本社から通知が来ているから、みんなしっかり目を通しておくように。」
な、なんと! 恐れていたことが現実に。というのも、私おでこ出したくないんです。それこそ採用試験のときや研修中は前髪をサイドに流していたけれど、ささやかな抵抗とでもいいますか。ピッチリさせずにゆったりと流す感じ、生え際の中央が隠れるように。
なぜなら、“富士額”がコンプレックスだったから。

昔から、「富士額は美人の象徴」と言われているようですが、私にとってはコンプレックスでしかありませんでした。(なんか古風)(安室ちゃんみたいなツルンと丸い額に憧れる)って、いつも思っていたんです。富士額のせいで前髪に変な流れができちゃうし、なにこのちょこんとした毛は……、って鏡を見るたびにため息が漏れる漏れる。
だから、
おでこ全開の新ルールは大げさではなく奈落の底にドーンと突き落とされたと思ったほどです。その日はすぐに業務が始まるからとヘアスタイルを直すのは翌日以降になったけれど、頭のなかは(嫌だ、嫌だ)でいっぱい。
その日の夜。鏡の前で前髪をオールバックにしてみます。
「
いやいやいや、やっぱりダメだ。これは」
サイドにピッチリ分けてみる。
「
うーん、どちらかと言えばこっちだけど……」
どうしても富士額が気になるんですね。