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「逃げ恥」平匡さんから「MIU404」志摩、すべてが星野源である理由

それまでのドラマで主役を張る俳優の定義を逆転させた

 俳優としての初期の星野は、イケメン大集合ドラマの走りと言われる「WATER BOYS」(03年 フジテレビ)にシンクロに青春をかける男子のひとりとして参加しているが、懸命に探さないとわからないほどだったし、「タイガー&ドラゴン」(TBS)や朝ドラ「ゲゲゲの女房」(NHK)でも地味めな脇役だった。舞台で主役になったときも追い詰められて爆発するような役であり、俳優としては通好みのタイプだったのだ。  それが、2010年代あたりから、イケメンブームと平行して草食男子ブーム、バイプレーヤーブーム、おじさんブームなど多様になってきたところに、草食男子ふうで、イケメン過ぎず、若手過ぎないバイプレーヤーと星野源は好まれる要素のあらゆるものをもっていた。音楽、演劇、文学と得意ジャンルのまんべんなさも理想的であったのだろう。それまでのドラマで主役を張る俳優の定義を逆転させたのが星野源であった。  また、活躍中にクモ膜下出血で生死の境を彷徨ったすえに復活したということも彼の人気を高めた。究極の陰陽――病と再生まで、あらゆるものの両義性を体現している人物なのである。
星野源「働く男」

星野源「働く男」文藝春秋

これが星野源であると決定づけない。すべてが星野源なのである

 いや両義性どころか多義性。「逃げ恥」のエンディング曲で、恋ダンスで大ヒットした「恋」も、ふたりでいることの喜びを歌っているとはいえ、最後は「夫婦を越えてゆけ、二人を越えていけ、一人を越えていけ」と歌い、「夫婦」や「二人」でない者にもとりつくしまを用意してくれる。  また、コロナ禍、インスタで流した「うちで踊ろう」という曲の「うち」が家(うち)ではなく心の「内(うち)」だとした知性。この曲をみんなでコラボしようとインスタで発表したら、安倍首相までコラボして、賛否両論、社会問題に発展したときも思慮深い言葉を発していた。
 いろいろなふうに解釈できるし、ひとつの意味に決められない。だから星野源とはどういう人かと書くのは難しい。強烈なメッセージ性やカリスマ性で人心を鼓舞しない。これが星野源であると決定づけない。家でくつろぐ猫のような「逃げ恥」の平匡さんみたいな人かと思えば、ときには噛み付く犬のような「MIU404」の志摩のようでもあり。すべてが星野源なのである。 <文/木俣冬> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
木俣 冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など
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