2002年にデビューした多部が、映画、ドラマ、舞台と活動してきて、09年には朝ドラ『つばさ』のヒロインもつとめ、ついに民放の連ドラ主演となった映えあるドラマが『デカワンコ』。
嗅覚が優れているから「ワンコ」なんだと思うが、ゴスロリファッションで捜査する。チャンキーヒールで犯人を追う姿はまったくリアリティーがないのだが、なぜか多部未華子が演じていると仕事も一生懸命で、好きな服着て働いて何が悪いの?という印象になるのである。まさに彼女にとってゴスロリは戦闘服ですという印象の真剣さで、ゴスロリの好き嫌い分かれそうな個性を中和してしまう。
『ナギサさん』も病院に営業に行くときでも、大ぶりのイヤリングをして、ひらひらしたロングワンピースを着用していくのだが、それもあまり気にならない。多部未華子が着るとちょっときれいめな営業用スーツのように見える。
メイは28歳にして大手製薬会社のMR(営業)のエースで、かなりいいマンションに住んでいる。服もアクセサリーも腕時計も高価そう。そもそも家政夫を雇えるくらいだからリア充。でも『ナギサさん』のドラマを愛しているのはリア充だけではなさそうで。それも多部未華子のひたむきさゆえではないか。

「これは経費で落ちません!」公式サイトより
お仕事ドラマのヒット作『これは経費で落ちません!』(NHK)のような会社の制服、ひっつめヘアは当然ハマる。姿勢が良いから見ていて清々しい気持ちになるのだ。よって、条件3姿もクリア。
一生懸命やっているから、多少のワガママもかわいいものとしてゆるせちゃう
多部未華子が俳優になったきっかけはミュージカル『Annie』。幼い頃に観て、出たくなって、小学時代から中学時代まで何年にもわたってオーディションを受け続けたという頑張り屋である。残念ながら『Annie』には出ることがかなわなかったが、舞台『セーラームーン』に夜天光役で出ている(ちなみにそのときのタキシード仮面は城田優だった)。その後、舞台では白井晃、蜷川幸雄、松尾スズキ、宮本亜門と一流の演出家の舞台に出ている。
以前インタビューしたとき、舞台に立つ時は睡眠をしっかりとって、規則正しい生活を送ると言っていた。舞台に限らず、ストイックな人なのだと思う。一生懸命やっているから、多少のワガママもかわいいものとしてゆるせちゃう。多部未華子にはそういう人徳がある気がする。
さて、『ナギサさん』。いよいよ最終回である。ナギサさんとメイが恋を意識しはじめているところが賛否両論で、恋愛でなく、あくまで雇用者と家政夫の関係でいてほしいという声もある。どんな結末を迎えても、メイが愛されれば、多部未華子の嫌われない才能は本物であろう。
<文/木俣冬>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『
みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:
@kamitonami