松本まりか「愛人」を熱唱。“令和の愛人女優”が似合う36歳になるまで
表現力と身体能力をコツコツと積み上げてきたからこその今
弱さをチラ見せする松本まりかこそが最後に微笑む
“愛人”感には「薄幸」「報われない」「日陰」「待つ」というような言葉を喚起させる一方で「しゃしゃり出過ぎないデキる女」という側面がある。正妻、あるいはヒロインに華をもたせたように見せながら、報われなくてもいいの、という殊勝なところを見せながら、その実、大変な責任は正妻、あるいはヒロインにおまかせして、ナンバー2の仕事はしっかり遂行しつつ、その自由をしっかり謳歌する。それをあざといとも言うし、有能であるとも言う。 その際、研いだ爪はあくまでも隠しておかなくてはいけない。どんなに頑張って力を磨いていてたくましいとしても、晴れ舞台で緊張してうまく歌えない、料理する前に鼻をかんでぐすぐすさせる、そんな弱さをチラ見せする松本まりかこそが最後に微笑むのだ。 <文/木俣冬> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami