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松本まりか「愛人」を熱唱。“令和の愛人女優”が似合う36歳になるまで

表現力と身体能力をコツコツと積み上げてきたからこその今

 じつは、『Cat in the Red Boots』で松本は歌を歌っているのである! もしこのときそれが高評価だったら2020年に「自分の人生で人様の前で歌うなんて、思ってもみなかった」などと綴っていなかったかもしれない。  個性的な声を歌では生かすことが当時はまだ残念ながらできなかったからこそ、今がある。器用になんでも引き受けるよりも、俳優として的確に演じる表現力と身体能力をコツコツと積み上げてきたからこその今。

弱さをチラ見せする松本まりかこそが最後に微笑む

“愛人”感には「薄幸」「報われない」「日陰」「待つ」というような言葉を喚起させる一方で「しゃしゃり出過ぎないデキる女」という側面がある。正妻、あるいはヒロインに華をもたせたように見せながら、報われなくてもいいの、という殊勝なところを見せながら、その実、大変な責任は正妻、あるいはヒロインにおまかせして、ナンバー2の仕事はしっかり遂行しつつ、その自由をしっかり謳歌する。それをあざといとも言うし、有能であるとも言う。  その際、研いだ爪はあくまでも隠しておかなくてはいけない。どんなに頑張って力を磨いていてたくましいとしても、晴れ舞台で緊張してうまく歌えない、料理する前に鼻をかんでぐすぐすさせる、そんな弱さをチラ見せする松本まりかこそが最後に微笑むのだ。 <文/木俣冬> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
木俣冬
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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